アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
☆看病③
-
買い物を終えた俺はアパートへ帰ってきた。
バタン……とドアを閉めて、背を向きドアに寄りかかった…。
目を閉じたら、あのレジのおばあちゃんの笑顔が浮かぶ。
………ごめんなさい。と心の中で呟いた。俺を気にかける人っていたんだなぁ…なんて、しみじみ思と感じた。
なんか体が重く感じるなぁ……ずっしりとした買い物袋を下げてそんな事を思い、目をすぅ…と閉じた。
すると、
「ゴホッゴホッ」と苦しそうな大きな咳が俺の耳に響いてきた。
その咳を聞いた瞬間、俺は目を見開き靴を脱いで足早に蓮がいる部屋へ向かった。
「蓮っ………!?だいじょっ………」
でも、俺が見た蓮は咳をしただけで静かに眠っていた。
すーすー…と寝息を立てる姿は、スーパーへ向かう前よりも穏やかに見える。
……よ、よかった………。
一人にしてたから何かあったらとも思ってたけど…さっきよりは楽になったかな……。
なんだか自分が間抜けに思えて「ふふ…」と笑えてしまった。
よく見ると買い物袋が放り出されて玄関に置き去りにされていた。
俺……蓮に対して必死すぎだろ………。
よっ…と、買い物袋を広い上げてキッチンに持って行って中を覗いた。
あ、よかった…卵われてない……。
シャツ腕まくりをして俺はご飯を作り始めた。
とんとんと具材を切っていく。
………本当はこのアパートで料理するの あの日で最後にするはずだったのになぁ……
料理をしながらキョロキョロと周りを見回すと少しは変わっているものの…、懐かしさが一気にこみ上げてきた。
あぁ………このキッチンで何十回、何百回って料理してきたんだもんなぁ……。
なんだかじわりと涙がこみ上げてきて頬を伝った。
「あれっ………?おかしいなぁ……」
ポロポロと頬を伝う。……ダメダメ、きっとこんな湿っぽい空気だからダメなんだ。
そう思って俺は1回 料理をする手を止めてカーテンを開けて窓という窓 全部をガラガラに開けた。
すると、ふわん……と夏風が部屋いっぱいに入ってきて俺の髪、頬、体全体を優しく撫でていき、眩い光が部屋全体に差してきた。
眩しくて一瞬 目をギュッとつぶったが、恐る恐る目を開けると また懐かしい綺麗な景色が目に飛び込んできて、ぶわっと涙が出てきてしまった。
あぁ………ダメなんだ………。思わずその場にしゃがみこむ。
ここは全部が懐かしすぎて、まだ思い出に出来ないんだ…。
ここに来るのはまだ早かったんだ………。
「ひぃっ……く……ぐすっ……ごめ…なさ……和也…ごめ………。」
急に和也に申し訳なくて、思い出にできてないのに…ここにいることが…和也に対して残酷な気がして……
俺は泣きながら膝にうずくまって和也に謝っていた。
「ごめ………ぐすっ…ひっく……かず……ごめ…なさ……」
「なに泣いてんの。」
泣いていると後ろから声がして、しゃがんだままバッと振り向くと、蓮がこっちを立ち尽くして見ていた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
111 / 129