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何者だろう。 side司
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どういうことだろう。
暗くて、何にもない…。
何とかイメージしてみようと努力したけれど、俺の凡庸な頭はなかなか思ったようにビジョンを思い浮かべられなかった。
もっと詳しく知りたかったが、水音の顔を見てやめた。
水音はさっきまで幼さの残る不安そうな目をしていたにもかかわらず、その時の水音は怖いほど大人びていて何の表情も浮かべていない様は冷酷にも見えた。
「じゃあ…そうだなぁ…水音は何が好き?」
「ボク…?」
はぁ。結局、こんなどうでもいい質問しか思い浮かばなかった。だけど、この時の俺は少しでも水音のことを知りたかった。
何しろコイツには俺にとっての常識が上手く通じない。いや、悪い意味ではなくて。
本当にわからないのだ。何が良くて何がタブーなのかも。
だから、ほんの些細なことでも知りたいと感じた。
黙って答えを待つ俺に、水音はやはりゆっくりと口を開いた。
「お水と…ボク、ヘタッピだけど…絵」
「絵? 絵、描くの?」
「うん。…ヘタッピだけど…」
「そっか。というか、やっぱり水は好きか?」
「うん。…だから、水音」
「え、それちなんでるの? そのまんまだな」
あまりに簡単な由来に俺は少し笑った。すると、水音も少し笑った。
それを見て、俺は水音がだんだん俺に心を開いてきているのを悟った。そして、単純に嬉しかった。
せめて、ここにいる間だけは笑っていてほしいとひそかに願ったりもした。
だが、笑顔もすぐに引っ込み、無表情で俺の次の質問を黙って待っている。その誠実さが返って可愛らしく思える俺は少しおかしいだろうか。
「あと、嫌いなものは?」
「嫌いな、ものは……怖い、もの…」
いや、それ答えになってなくないか?
「それはオバケとか、幽霊とかそういうカンジのものを言ってるのか?」
俺がそう聞き返すと、水音は眉をハの字にして俺の顔を見つめた。
ン〜〜〜〜〜………。
「……俺は?」
「え、う、あ…」
たちまち水音の頰がほんのり赤くなり、唇がわずかに『スキ』の『ス』に動いた。その後は水音が両手で顔を覆ったせいで見えなかった。
ここで一つ分かったことがある。
俺、俺もコイツに相当ヤられてるわ。
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