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ヤキモチ
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「水音」
俺は水音の視線を遮るようにアルバムを閉じると、元の位置に戻した。
こんなのに釘付けになってる水音なんて、あまり見たくない。気恥ずかしいし、少し妬ける。
「あ…」
水音はなぜか切なそうな声を出したが、俺はそれをかるく流して水音を抱きかかえた。
「水音は小さいな」
「…今だけ、だもん」
「はは、なら明日は凛太朗がウチに来た時みたいにデカくなるのか?」
「……凛太朗さん」
「ほら、俺の後輩の。水音が寝ている間に来たヤツだよ。覚えてネェか?」
「…覚えてる」
「アイツは本当にいいヤツでな、水音のこと、弟みたいでかわいいって話してたんだぞ〜。
1人で留守番してるって聞いたもんだから、心配だから俺に今すぐ電話しろってさ。
したら水音、なんか泣きそうになってたし」
「な、なってない!」
「ほら、凛太朗の言うとおり。水音は絶対に俺に本音を話さない。強がっちゃう」
水音を抱きかかえたこの姿勢だと、水音の子ども体温をより感じることができる。
朝だと少しひんやりとしているけど、お風呂上がりや夜は子どものように体温が高いことも最近気づいたことの一つだ。
「………」
「…黙っちゃったかー。やっぱ俺、どっかで怖がられてるのかなぁ。
よく何考えてるかわかんないって言われるし…」
「ち、ちがう!ちがいます!」
突然水音が俺の膝の上で暴れ出した。なにやら必死にもがいているが、何がしたいのかがわからない。
嫌がっているのかと腕を解くと俺の腕を引っ張り、抱きしめてほしいのかと思って腕の力を強めるとさっきよりましてバタバタと足をバタつかせた。
ただでさえバタバタしているのにそれに加えてこの姿勢。水音の顔がよく見えない。
頑張って左側に首を伸ばして覗き込もうとすれば、イヤイヤをするように俺の右腕に顔をうずめる。
他にもしばらく水音の気持ちを読み取ろうといろいろしたが全部かわされて失敗。
打つ手のなくなった俺は根負けした。
「水音? なんだよ…何がしたいの?
暴れてないで、口で教えろよ」
俺の途方に暮れた声に水音はピクッと反応して動きを止めた。
そして今度は遠慮がちにモゾモゾと動き出した。何もせずにしていると、ちょうど体を180度回転させ、水音と向き合う形になった。
「水音?」
「ぼ、僕…あの、ホントに司さん、好きです。怖くないです。ホントです!信じて…く、だ…」
限界だったらしい。
「ウワァアァァァあん!!」
ついに泣き出してしまった。
パニックになった俺は咄嗟に幼い幼稚園児をあやすように頭を撫でたり、背中をさすった。
そして後から、『あ、コイツ16歳だった』と思い至り、手の動きを止め優しく抱き寄せた。
あぁ、なんでこう俺は咄嗟の行動ができないんだろうか。俺は何回水音を泣かしてしまうんだろう。
小さくため息をついた。
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