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ブラックコーヒー side凛太朗
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…一方、そのころ。
「はぁ…」
俺は口を軽く尖らせながらため息をついた。
今日は月一度の定休日ということもあって俺のまわりは静まり返っている。
まばらに仕事が残っている人が社内にいるぐらいで、仕事がスムーズにできず働いている自分が腹立たしい。
「あ、またここミスってる…」
カチカチとマウスのクリックの音がやたらハッキリと聞こえる。
今は俺が作成したデータの最終確認中だ。
司先輩や青史先輩ならしなくても済むだろうこの作業は俺にとってはまだ必須の作業で。
とても億劫だ。
司先輩…元気にしてるかな…
この前まで出張で全然会えていなかったから、まだ司先輩と仕事するのは新鮮さが拭えない。
1ヶ月ぶりに会った司先輩はなんだか嬉しそうで。
すぐにかけ寄りたかったけど、青史先輩と仲よさそうに話しているうちにタイミングを逃してしまった。
カチリ。
キーボードのEnterキーを押して、手元のコーヒーを一口口に含む。
苦いな…。
いつもはシュガーたっぷりのコーヒーしか飲めないのに、なんで今日に限ってブラック飲んでんだ、俺…?
そうしてしばらくもの思いにふけっていると、不意にコーヒーの色が黒みを増した。
驚いて振り返ると、そこには背の高いスーツの男が立っていた。
線の細い体つきだがそれでいてしなやかでとても上品なイメージを受ける男だった。
「あぁお仕事中すみません。驚かせるつもりはなかったのですが…
お手洗いの方はどちらに?」
柔らかく唇がカーブを描き、耳に残るテノールの声で言った。
「あ、あぁ、案内します。こちらです」
あわてて立ち上がる。
自分の心臓が大きく高鳴っているのを感じる。
男は黙って俺の後をついてきたが、俺の心は静まることなくバクバクと音を立てるばかりだった。
1分足らずで目的地に着き、俺は男を待っていた。
そして手持ち無沙汰になってはじめて、自分がなぜこんなことをしているのか疑問に思った。
今日は定休日で、客人など来るはずもないのだ。
それなのにあの男は音もなく俺の背後に現れ、お手洗いの場所などを尋ねた。
反射的にここまで来たが、アイツは一体誰なんだ…??
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