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この世で一番…
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「青史!!」
ホテルの一室から飛び出すと、暗かった青史の顔がぱあっと明るくなるのが見えた。
「司!!」
そのまま俺は青史に突進した。
青史も俺を、受け止めてくれた。
優しく、強く、抱きしめてくれた。
なんだか、ようやくわかった気がする。
「俺、やっぱ青史が好き…」
とたんに俺の中で何かがプツンと切れた。
身体じゅうの力が脱けていく。
2人で静かに、その場で抱きしめたまま座り込む。
もっと強く抱きしめてほしくて、青史にしがみつくと、青史の背中がふるえていることに気づいた。
俺も声をあげて泣いた。
冷静だったつもりが、そんなこと全然なかったんだ。
そのときの俺は青史に抱きつくことしかできなかった。
この世で一番安心する背中に包まれていると思うと、涙は止まらなかった。
青史は、いつだって俺を優しく受け止めてくれた。
あの日の席替えのとき、両親が離婚したとき、そして藤本のことも。
あの席替えの日からずっと、忘れた日なんて一度もない。
いつも俺の心の中には青史がいて。
いつからだろう。
この世で一番愛しいと分かったのは。
それはずっと前のような気もするし、今のような気もする。
どんどんあふれてくるこのキモチをいつでも伝えたかった。
だけど、俺の中の理性とプライドが邪魔して、青史の気持ちに気づかないふりをしていた。
「司…!」
グズグズと鼻をすすってから、青史は吐き出すように言った。
「ほんとおまえバカじゃねーの!
毎回毎回俺を不安にしやがって…
危なっかしいんだよ、おまえは!」
「ごめん、なさぃ…!」
「もう俺から離れんな!
じゃねーと…俺でおまえを縛りつけるからな!!」
「…つけて」
「は?」
「しばり、つけてよ…俺を縛りつけてって言ってんの!」
「おま…わかった。わかったよ!
お望みどおり縛りつけて俺から離れないようにしてやるよ。
だから、だから…もう、こんなことしないで…!」
「うん。…うん!」
「俺、心臓、止まるかと思ったんだからなぁ!」
こくこくと何度も頷く。
そして、ようやく俺を心配そうに見つめる誰かに気づいた。
「凛太朗…?」
凛太朗は黙って俺の手をとると、自分の眉間に手の甲を押しつけた。
「ごめんなさい、俺…ほんとに先輩が襲われているなんて思ってなくて…
正直、信じられませんでした。
だけど、先輩は……今、泣いてます。
ほんとのことでした。
俺、スゲェひどいやつッスよね…
いっつも先輩にはお世話になってばかりなのに、何もできませんでした。
ほんと、ほんとに…すみません」
凛太朗は目を潤ませながら、しっかりと俺の目を見て言った。
「この、正直モンが…
おまえが謝る必要どこにもないんだよ、バカ…」
また一粒、涙が落ちた。
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