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この世で一番…
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涙ぐむ凛太朗の肩をポンポンと叩きながら、俺はもう一つの声の主を探した。
だけど、今見えるかぎりではいなかった。
「あれ…水音は?」
「司、いい度胸だな。
またちがう男の話かよ。
凛太朗で俺の許容量はいっぱいいっぱいなんだけど?
この天然タラシがよお」
「許容量って…先輩結構な独占欲じゃないすか。
司先輩も司先輩ですけど」
そう言いながらも、凛太朗は機嫌がよさそうだ。
どうやら呆れているのは口先だけらしい。
ほんとかわいい後輩だと思う。
て、そうじゃなくて。
「でもそういえばさっきから姿が見えませんね。どこに行ったんだろう?」
そう凛太朗が首を捻ったときだった。
さっき出てきた部屋から何か聞こえた気がした。
「…なんか聞こえなかった?」
「そうですね」
「え? 一応こういうところって防音設備あるんじゃないの?」
「でも、なんか叫び声みたいな…」
「まさか、水音くんが何かしたとか?」
「え、水音が暴力? いやそんなことはないと思うけどな…」
「いえ、あの、先輩、やっぱこういうところですから…」
「ええそれこそ考えられないよ。
水音がふじ…部長を襲うの?
どんな構図だよ…」
「ちがうだろ。
藤本が水音を襲う方だろ」
「ちょ…一応部長だから、さ」
俺が凛太朗をちらりと見ると、凛太朗は案外けろっとして言った。
「そんなの今更ですよ、先輩」
「え、そ、そうなの?」
「あたりまえだろ、そんなの…」
やれやれと青史が立ち上がり、何かを言いかけたと思ったら、青史が急に前のめりで倒れてきた。
「うわっ!」
「え、何!?」
「だ、誰か!!」
どうやら青史の後頭部にドアが激突したみたいだ。
頭を抱え込む青史を横目に現れたのは、まさにその部長だった。
何か信じられないものを見たみたいに顔を真っ青にさせている。
二重の緊張感で、その場はふたたび引き締まる。
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