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転がる運命 sideウラノ
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その頃…
僕はと言うと、ラボにいた。
いつでも天使な僕がこんな苦い顔をするのはココだけだ。
そんな顔をするわけはもちろん水人間のせいだ。
水人間ーーー正式名Water Android……
普通のアンドロイドと機能はほぼ似ているが、まったくちがう点が1つある。
それは水をあらゆる活動のエネルギーとし、8割が水でできているということ。
ついた名前が、水人間。
だけど実は逃走中のアンドロイドはまだ完全に完成していない。
それに加えて逃走してから2ヶ月の今となってはあれは旧式となる。
あのアンドロイドは企画書では毎日2リットルの水を摂取しなければすぐにエネルギー不足となり原型をとどめなくなる。
エネルギー不足になればシステム、人間でいう正気を失い、何をするか分からない。
要するに未知のスライムとも言えるシロモノなのだ。あれは。
それだけではない。
一番ややこしいのは、あれは本当はまだ世間に出てきてはいけないものだということだ。
「ウラノくん」
突然後ろから声をかけられた。
だけど僕は冷静さを失わずボロボロの細いベルトの腕時計を見た。
「もう、そんな時間か…そこ、おいといて」
「はい。…ここでよろしいでしょうか」
「うん」
「ウラノくん、そろそろエネルギー補給に行ってもいいでしょうか」
「はいはい」
「ありがとうございます」
丁寧に頭を下げる気配がして、僕はやっとそちらを向いた。
デスクの蛍光灯で照らされた綺麗に整った顔が僕を無表情で見つめた。
「なにか、ご用でしょうか?」
「………」
「…また、旧式のことでお悩みでしょうか」
それでも無言の僕を不機嫌と受け取ったのか、すぐにソイツはまた頭を深く下げた。
「差し出がましいマネを、失礼いたしました。
今の質問はなかったことに…」
「いや、いい。…そうだよ、キミの弟が見つからないんだ」
「では、ボクが見つけて参りましょうか」
「………うん…」
そうなのだ。
探すのは簡単なのだ。
でも、コイツで探すとなればコイツも同時に世間に晒さなければならない。
だけどそれは上が許さないだろう。
どうしたらいいものかと悩んでいるうちに、ラボの重いドアが閉まる音がしたことに僕はだいぶ経ってから気づくのだった。
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