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囚われのウサギ
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同時に、先輩はそれでいい、と思った。
矛盾しまくりだっての分かってる。
言ってることも態度も支離滅裂かもしれない。
だけど、俺の一見一句に動揺して、怯えて、青史先輩と向き合っててほしい。
臆病でしあわせなウサギのままでいい。
だから、これは愛のムチ。
俺はわざと笑みを消した。
そうするといっそう先輩は俺のこと、怖がってくれるから。
「名字が変わったのはなぜですか?
音無先輩」
「…親が離婚した。それだけだ」
知ってる。スキだから。
「いやそんなはずありませんよ。
だって先輩の離婚はたしか高校二年の1学期の終わり頃でしたから」
「…成人してから名字を変えた、それだけっつってるだろ。
他に意味なんてねぇよ」
うん、分かってる。スキだから。
司先輩の顔がどんどん血の気がひいていく。
さあ、俺から、逃げて。
「そうなんですか。
それにしても最近運命感じちゃうんですよねー
同じ会社の同じ部で働くことになったと思ったら、休みの日でもこうやって会えるなんて!
俺、チョー嬉しいですよ」
「…なんでお前と凛太朗が一緒にいるんだよ」
「あらら、無視ですか?
ま、先輩なら許せるんですけどね〜
先輩はあいかわらずカワイイし」
ほんとのことだ。
ギロリと睨まれる。
「質問に答えろ。答え次第では承知しねぇ」
「なんですかー妬けますね。
凛太朗が羨ましいっすよ」
「凛太朗は俺の後輩だ。巻き込むな!」
「俺の後輩でもありますよ」
「!」
「ついでに先輩は俺の後輩でもあります」
「黙れ!」
見当違いの方向に話がすすんでいく。
ちがう、そこに反応してほしかったんじゃない。
「別に特別な意味なんてありませんよ。
あんなのお遊びです」
「お前…!
凛太朗に手ェ出すなよ!
凛太朗はなんにも知らないし関係ないんだぞ!」
「だからお遊びですって。
ちゃんと本命は大切にしますよ。
…それより」
あともう1つ。
「あの男、だれ?」
思ったより冷たい声が口をついて出た。
先輩が今までとは比べものにならないぐらい動揺してるのが見てとれた。
いや、動揺よりももっと激しいなにか。
突然先輩の身体が小さく震え出す。
それはしだいに大きくなっていく。
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