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半泣き研究員 sideウラノ
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その頃…。
僕、ウラノは柄もなく必死に走り回っている。
「おーい! おーい! ジュン! ジューンー!」
さっきまで僕の部屋にいたジュン…水人間がいつのまにかいなくなっていた。
いや僕の知らない内にいなくなっているケースは毎日のようにあるんだけど、研究所のどこかにはいるようプログラムしてある。
さっきまでシステムは正常だったはずだし、燃料補充機能が赤ランプだったからてっきり補充施設のあるフロアにいるのかと思っていた。
だけど一向に帰ってこなくて、1つ文句を言ってやろうと僕がめずらしく自分から部屋を出たというのにこの有様だ。
「ジュンー! どこだよ! いるんだろ?」
僕の研究所がある北棟にはほとんど人がいない。
知らない人がいると集中できないし苦手だしめんどくさいし、報告書とか連絡とかは内線で十分だからこの研究所にはほとんど人の出入りがない。
掃除も家事もまわりの世話も今までジュンがやってくれてたからすごく気らくだった。
呼んだら大抵すぐに僕の隣に来てくれるし、燃料さえ切らさなければ本当の人間の家族みたいにあったかいから寂しくもなかった。
たまに斗真に会えれば十分。
僕は白衣のポケットの中のハンカチをにぎった。
斗真がちっちゃい頃くれたお守りもあるし。
大丈夫。大丈夫。
「ジュンー…! ジュン…」
僕の声が虚しくひんやりした廊下に響く。
急になんだか怖くなって、僕はたまらなくなってスマホを取りに僕の研究室に戻った。
いつもの資料が散らばってる研究室なのに、何かが足りない。
紙の山をめちゃくちゃに引っかき回していると、ようやくスマホが見つかった。
無機質で薄っぺらいそれを落としそうになりながらも電源をつける。
残り8パーセントという赤い文字も目に留めながら急いで斗真のケータイにかけた。
プルルルル…プルルルル…プルルルル…
だけどいつまでも斗真は出てくれない。
ワンコールする度にジワジワと不安が募ってきて、5回目のコールのときには半分泣きそうだった。
もう背に腹は変えられない。
堪えかねて電話を切り、僕はもう一つの連絡先の番号をタップした。
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