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半泣き研究員
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「ーーーはい」
「もしもしっ!」
電話はすぐにつながって、僕は一気に心が軽くなるのを感じた。
…とくに心が軽くなるような人物じゃないのに。
「…どうしましたか? 浦野研究員」
愛想のいい、だけどどこか無機質な声が僕の名を呼んだ。
軽くなりかけた気持ちがすこししぼむ。
「あ、あの…水垣秘書」
「…? 社長は今会議中なので伝言でよろしければお伺いしますが」
「いや! やっぱり結構です! あの、そう、間違えました! では失礼します!」
夢中で忘れてたけど、僕のコミュ力0だった!
パニックになった僕はどうしたらいいのか分からなくなってスマホを耳から離した。
「え、ちょっと待ってください!」
向こうからも焦った声がして、僕は出しかけた指を思わず止めた。
あー!!なんで切っちゃわないの!僕のバカ!
頭の中がぐちゃぐちゃになりながら揺れる自分を責めた。
けれど水垣秘書の言葉はもう次には元の穏やかな声だった。
「落ち着いてください。
あなたに限ってわざわざ内線使わずに電話なんてよっぽどのことがあったのではないですか?
私には話せませんか?」
「…………」
思わぬ人にかけられた優しい言葉に僕はついに泣いてしまった。
「………ゥ…」
「え? 浦野け…浦野さん?
泣いて、いらっしゃるのですか?」
「……みず、がきさんッ…」
「はい」
どうしよう。
ジュンがいなくなったこと言ったら絶対僕、ここにいられなくなる。
斗真にも嫌われる。
でも、でも…寂しいッ!寂しい…
「ぅま…ぁ…ッ」
「え?」
「斗真ぁああ」
「斗真様がどうかしましたか?」
「斗真…二人ッ…いない…斗真ぁ!」
「え? いないって…」
「ごめんなさい…ごめんなさいッ! 僕…僕…」
「わ、分かりました! 分かりました! 手の空いてる人に探させますから! 泣かないでくださいよ!」
泣き出した僕にあわてて声を潜めて水垣秘書は言った。
ザワザワと外の音が大きくなる。
外にいるんだ。
僕、迷惑…かけてる。
胸がつぶれそうになるくらい苦しくて、僕はとうとう返事をろくにしないまま電話を切った。
「ごめんなさいッ…斗真、ゥッ…僕、僕、サイテー…!」
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