アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
秘めるべき告白
-
最後に父親は貼りつけたような完ぺきな笑みを司と呼ばれた男の子と秘書に向けてから
俺の父親は何事もなかったように立ち上がり、自分の秘書を連れどこかに行ってしまった。
俺を1度たりともまっすぐ見ずに。
しばらく歩いて、ふいに秘書がこちらを振り向いた。
その顔には人のよさそうな笑みが浮かんでいて、バレないように小さく手をふった。
一瞬、とてつもない嬉しさがこみ上げた。
思わず自分も右手を上げかけた。
だけど目の前の司くんがそれに応えるのが見えて、すぐにさっきのは自分の子どもに向けたものだとわかった。
秘書のその姿は、まぎれもなく子どもを優しく見守るパパの姿だった。
少しだけ、羨ましいと思った。
両親のこんな姿は俺にも俺よりも可愛がられている姉貴にも見せたことがない。
ふいと踵を返し、俺は、ねぇと呼びかけた。
「こっち来いよ。屋敷内を案内してやる」
背中を向けていたけど、数秒遅れて地面の芝生を蹴る音が聞こえた。
「…ありがとう」
「…なんでもねーよ。こんなこと」
そう。なんでもないんだ。
俺はこいつが気に入ったから。
なんでもない。
そんな言葉が喉の奥でぐるぐるとループしていた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
196 / 431