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メアリーはまだ戻ってこないが大丈夫だろうか。
料理を口に運びながら、ちらちらと扉を確認するが、彼女の姿はまだ見当たらない。
「それにしても…つまらないな」
先程まで楽しくおしゃべりしていたからか、1人の食事がいつもより寂しく感じる。
そもそもうちは食事の時は家族揃っていたし…
メアリーもゼンも普通に話してくれるが、他の侍女達は少し違う。
使用人だから当たり前なのかもしれないが、一線を引かれてるような気がしてなんだか心の距離を感じるのだ。
「メアリー早く戻ってこないかな」
結局メアリーが帰宅したのは、俺が食事を終えた1時間後のことだった。
そして、帰宅するとすぐにメアリーはアルフさんに叱られていた。
*
「フンバの肉を使ったサンドイッチなんてだいぶヘルシーだな、魔族領ではあんまり見かけない」
「夜中に食べるとなるとさっぱりしたものがいいと思って…人間領では、割と定番のサンドイッチだよ」
今日買ってきたシェロックの実の果汁を垂らすと、風味と味にフルーティーさが出て、食べた後の口通りもとてもいい。
小さい頃には、庭でピクニックごっこと称して、よく食べていたものだ。
「エリックってホント手慣れてるな」
感心したようにゼンが言うので、少し照れる。
ちなみにゼンは、夕飯の片付けが終わった後に、こうして自分の時間を削って、俺のサンドイッチ作りを見てくれている。
「料理人のゼンにそう言ってもらえるなんて光栄だよ、あっ、これ!味付けしたフンバ肉食べてみて?」
端っこを切り落とし、ゼンの口の前まで持っていくと、驚いた様子で一瞬止まっていたが、恥ずかしそうにパクリと食べた。
俺の手についたソースをペロリと舐める姿が、なんだか色っぽくて、少しドキッとする。
「ん、うまい!これ結構いけるな」
「よかった…魔族の人の舌でもいけそうかな?シド様、食べてくれるかな」
勢いよくサンドイッチを作ったが、そもそもアルフさんに受け取ってもらえなかったらどうしよう。
サンドイッチを作り終えたところで、丁度アルフさんの姿が見えたので声をかけると、驚いた顔をされた。
と言っても、本当にごく一瞬で、またすぐいつもの無表情に戻ってしまう。
「エリック様、本当に持ってきたのですか?」
「アルフさん、シド様にお願いします。一口だけ食べて、捨てても構わないので…俺はここで待ってます」
「ここは廊下ですよ?お部屋でお待ち下さい、私が伺いますので」
「いえ、ここで待ってます。すぐに知りたいので」
アルフさんの意見を無視してその場に座ると、大きなため息をつかれた。
ちょっと強引だったかな……でもちゃんと部屋に持っていくところ見ないと、シド様の手に渡ったかわからないし。
アルフさん、ごめんなさい!俺は、心の中で手を合わせた。
サンドイッチは持って行ってもらえたけれど、なかなかアルフさんは戻ってこない。
やっぱり仕事が溜まっていて、口にしていないのだろうか。
それとも、嫌いな食べ物だっただろうか。
「エリック様、まだ夜は冷えます。良ければこちらをお使いください」
メアリーがブランケットを俺の肩にかける。
少し寒いなと感じていたので、ちょうど良かった。
ゼンはメアリーのことを侍女としての姿勢がなってないと言うけれど、こういった気遣いはピカイチである。
「ありがとう。メアリーは部屋に戻っていて大丈夫だよ。眠いでしょ?」
「いいえ、エリック様がこちらにいらっしゃるのに、私一人で戻るわけにはまいりません」
そう言ってメアリーは俺の横にちょこんと立った。
付き合わせてしまって申し訳ないな。けれどもちょっぴり嬉しい。
もう少し待ってみてアルフさんが戻ってこなさそうだったら、メアリーのためにも部屋に戻ろう。
「エリック様は、とてもお優しい方ですね。シド様の時間を大切にしながらもそっと気に掛けていらっしゃる。私はエリック様の侍女になれてとてもよかったですわ」
「メアリー…急にどうしたの?」
横にいる彼女の顔を見上げると、嬉しそうに微笑んでいた。
突然褒められたことで、どう返していいか困っていると、ふふと小さく笑われる。
「なんでもないです。シド様がサンドイッチを召し上がってくれると良いですね」
それからどれくらい経っただろうか。
いつの間にか眠っていたようで、ふと隣を見ると、メアリーが俺の肩に頭を預け、小さな寝息を立てていた。
2人で寝てしまったのか……
ガチャリ
扉が開く音がしたので、アルフさんかと思い視線を向けると、シド様がこちらに歩いてきた。
初日は座っていたので気づかなかったが、身長も高く、服の上からでも適度な筋肉がついているのがわかる。
ただ歩くだけでもこんなに絵になる人がいるとは……
思わずじっと見ていると、シド様と目があった。
最初に見た時と変わらぬ、綺麗でそして恐ろしい瞳。
シド様の右手を見ると、サンドイッチのお皿が空であることに気づいた。
「あ、あの…サンドイッチ召し上がったんですね!お身体には気をつけてください」
嬉しくなってつい声をかけるが、そのまま無言で通り過ぎてしまった。
味は大丈夫だったか気になるところだが、空になっている様子だと、不味くはなかったのだろう。
少しホッとする。
「おやすみなさい、シド様」
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