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「パーティーですか……?」
それは突然にアルフさんから出た話であった。
「ええ、魔王城で行われる魔族を中心としたパーティーですが、人間領からも王室の方々がご出席されます。公式のパーティー故、シド様とご結婚されたエリック様にもパートナーとして参加して頂きます」
どうやら二日後に、魔王城でパーティーが催されるらしい。
アルフさんの話だと、結婚式やお披露目会を行なっていない俺達は、挨拶回りをする必要があるらしい。
夫婦らしい生活を送っていなかったので忘れていたが、そういえば俺達は結婚していたんだった。
「わかりました。何か作法などはありますか?」
「いえ、人間領と特に変わりません。ただ、メイン会場内は使用人が入れないので、シド様にご迷惑がかかるようなことは絶対にしないでください。絶対ですよ!隣の部屋には私とメアリーがおりますので、何かあればすぐお呼びください」
えっ……シド様と2人っきりで過ごすってこと!?メアリーは近くにいないんだ…
まだ2回しか顔を見てない上に、ほとんど話したこともない。
そんな状態でいろんな人に挨拶ができるのだろうか。
それに、パーティーの出席回数も他の貴族より少ない。
なんだか緊張しちゃうなー…
*
結局シド様と2人で馬車に乗り込んだのだが、屋敷を出て以来ずっと沈黙が続いている。
俺と乗るの嫌なんだろうなー…
それとも気に触るようなことをどこかでうっかりやってしまったのだろうか。
そもそも、シド様のお怒りポイントがわからない。
不安で頭をぐるぐるさせていると、シド様が口を開いた。
「お前の趣味や好みは、アルフからの資料で頭に入っている。2人で挨拶するのは4人くらいでいいだろう。俺の話に合わせて笑顔で対応していればいい。それ以外は、俺が1人で挨拶まわりをしてくるので目立たぬように待っていろ」
ただ一方的に告げられる言葉。俺に好き勝手に喋らせる気はないらしい。
しかし…目立たぬようにって、そんなことなら最初から俺はいなくてもいいのでは?
つい口が出そうになるが必死に抑える。
魔王城に着いたようで、ガタンと揺れて馬車が止まる。
降り立つと、真っ黒な城がたっており、1番上の塔には煌びやかに光る赤い宝石のようなものが埋め込まれてあった。
それにしてもこんなに真っ黒な城は初めて見た。
「何をボサッとしている、入るぞ」
「は、はい!」
魔族の世界では、黒を纏うことは王族のみ許されていることらしい。そのため、魔王城の中には、黒のオブジェなど黒色のアイテムが散りばめられていた。
大広間に入ると、大きなシャンデリアがキラキラと輝くだけでなく、魔力で作られた光の粒がそこら中に散らばっており、とても幻想的な世界が広がっていた。
「すごい綺麗…」
初めてみる光景にキョロキョロと目移りをしていると、シド様に腰を引き寄せられた。
こんな間近でシド様の顔を見たのは初めてだ。
やっぱりとてつもなく綺麗な顔だ。
「はしゃぐな、みっともない。まだ魔王陛下はいらっしゃってないようだな…お前はここで食事をとりながら待ってろ」
そういうと、シド様は近くにいたどこかの貴族の元へ挨拶しに行ってしまった。
べ、別にはじゃいでなんかいないのに。
シド様のことを目で追ってみるが、見たことないような柔らかい表情で対応していて、とても驚いた。
「あんな表情できるんだ…」
この中の誰よりも近い場所にいるというのに、誰よりもシド様のことを知らない自分に、少しだけ寂しさが募る。
この人は本当に書面上の関係だけが欲しかったのだろう。
俺にもあれくらいの愛想を振りまいてくれても良いのに。
それにしても、容姿端麗なシド様の周りには、男女関係なく様々な人が集まっていく。それはもう魂が抜き取られたようにうっとりとしたような瞳で。
きっとシド様と結婚したい人は沢山いるんだろうな。
「エリック」
壁の花になってもくもくと食事をしていると、誰かに名前を呼ばれ、腰を引かれる。
フワッと嗅ぎ慣れた花の香りがした。
「フリード…」
心なしかいつもより輝いている見えるブロンドの髪に青い瞳。薄い唇は弧を描き、嬉しそうにこちらを見ている。
「今日の濃紺のタキシードもよく似合っているね。でもやっぱり白の方がエリックには似合うな」
思いの外近い距離にフリードの顔があり、恥ずかしがっていると、クスクスと笑われた。
「海外出張から帰ってたんだね」
「昨日の朝城に戻って父上とこちらに来たんだ…それにしても」
フリードは俺の左手を掴むと、薬指を何度か優しく撫でる。
「ハイドリッヒ公爵に嫁いだってどういうこと?エリック…彼のことを好きだったの?」
なんだか少し怒っているようだ。いつもよりもトゲトゲしい言い方に聞こえる。
「違うよ。家の事を考えて政略結婚したんだよ。ほら俺って病弱で長男らしいこと出来てないから、少しでも役に立ちたいなと思って」
「だからって結婚することはないだろ!はぁ…正直エリックの結婚に対するハードルがこんなに低いと思わなかったよ。本当に昔から君には振り回される」
確かに公爵家の長男が嫁ぐのはあまり聞いたことがないかもしれないけれども…
「ご、ごめん。でも、きっとフリードの力にもなれると思うんだ」
「エリック、僕の助けになりたいと思ってくれるのは嬉しいけれど、それは僕の隣でやってほしいね。できれば生涯ずっと、僕だけのことを考えて」
可愛らしいリップ音を俺の左手の甲に落とし、フリードは優しく微笑んだ。
あまりにも自然な流れでされたけれど、いつもよりスキンシップが多くないだろうか。
女性がやられたらそのまま倒れてしまうのではないかと思うほどのその紳士的な振る舞いに、思わず顔に熱が集まる。
フリードを直視できなくて、周りに目をやると、何人かの人がこちらを見ながらヒソヒソと話し込んでいた。
し、しまった。人が沢山いるんだった……
こんな恥ずかしい場面を見られるなんて。
もう手遅れかもしれないが、両手で顔を隠す。
「ここだとちょっとギャラリーが多い。別室にでも行こうか」
「ま、待ってフリード。俺これからシド様と一緒に挨拶まわりがあるから離れられないよ」
俺の手を掴み歩き出そうとするフリードを止めるが、関係なしにそのまま歩き出してしまう。
扉の近くにいるスタッフに何やら声をかけると、大広間を出た。
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