アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
4
-
店の看板に灯りがともり、店内の照明もつくと、
さっきオッサン二人で焼きおにぎりを喰ってた場所とは思えないくらい華やかな空間になる。
店の「女の子」たちも色とりどりのドレスを身にまとってそれぞれの客席に散っている。
俺は一番奥のソファー席に座って、いつくるかわからない待ち人を待ちつつ、
ママに昔話をすることになった。
ママが作ってくれた、ごく薄い水割りで唇を湿らせて、俺は話し始めた。
俺の実家は文房具屋だった。学校や近くの会社なんかと取引も順調で、商売はうまくいってた。
だから京都の大学に受かったときには、卒業したら実家に帰って家業を継ぐものと、
俺もオヤジも思ってた。
ところが友達と軽い気持ちで見に行った舞台で、演劇に興味をもってしまった。
何度も何度も見に行くうちに、好きで好きでたまらなくなった。
とうとう劇団に入って演技をはじめたらさらにのめりこんだ。
学校に行かなくなり、単位を落として留年した。
正月に実家に帰って烈火の如く怒ってる親父に、役者になるといったら張り飛ばされた。
勘当だ。そこまで言われて、俺も逆上して家を飛び出して京都に戻ってしまった。
大学を中退して、アルバイトをしながら劇団に通った。
それから家には連絡もしていない。
25歳くらいのときに、付き合ってた女に
「あたしと芝居、どっちが大事なの」と聞かれた。
そこそこ大きな舞台のオーディションを受けた直後だったから、迷わず「芝居だ」といったら
それきり連絡がとれなくなった。
そのあと、オーディション落選の通知が来た。
家を飛び出して5年。芽が出ない。さすがに焦りもあったし、彼女もチャンスも失って、
そうとう凹んでるそんなときに、
新劇団員歓迎会に引きずり出された。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
4 / 47