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そんなとき、劇団の看板女優のミズキに話しかけられた。
「ジョー、最近楽しそうじゃない。」
「え?そうか?」
「ほら、オーディションの結果のあと、すごく落ち込んでたでしょ。」
「ああ・・・。」
「新歓の飲みの時だって、俺なんか・・・俺なんか・・・って、 ずっと言ってたわよ。」
ああ、またか。俺あの夜どんだけ醜態さらしたんだか・・・。
天を仰ぎたい心持ちだ。
こないだ藤川に偉そうに、「もっと自分を好きになれ」だの「自信を持て」だの
言ったがあれって自分に言ってたのかもしれないな。
「でもほら、最近ペキちゃんとじゃれてるとき、ほんと楽しそうよ?」
「あ?ペキって誰だよ。」
「えーーー、ジョー知らなかったんだ。」
俺は速攻で酔っぱらってたから聞いてなかったのだが、藤川は自分の自己紹介のときに、
「ふじかわみどり。みどりは、こんぺきのぺき、とかいてみどりです。」
と言ったらしく、それを憶えていた一部のやつが「ペキ」と呼び始め、
劇団内で少しづつ浸透しているらしい。
ショックだった。
なんで俺だけあいつの愛称を知らなかったんだ。
ていうか、下の名前も今聞いたわ。
「おい藤川。」
「あ、ジョーさん。」
小道具の手直しをしてる藤川をみつけて声をかけた。
「お前ペキって呼ばれてるんだって?」
「あ・・そうみたいスね。」
「俺は呼ばないぞ。」
「え?」
「そんな犬みたいな名前で呼ばねえぞって言ってるんだよ。お前だってやだろ?」
「いや・・・僕は別に・・・。憶えやすいし・・・。」
「俺はずーーーーーーーーーーーっと、藤川って呼ぶからな!」
捨て台詞のように言って、きょとんとしている藤川を残して歩き出した。
ああ。誰か教えてくれ。
俺、一体ぜんたい何がしたいの??
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