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「・・・はい。結構です。」
声を掛けられてはっと我にかえった。
目の前の主演女優が瞳をうるませて俺を見ていた。
どうやら俺の想いは彼女に伝わったようだった。
「ありがとうございました。」深々と一礼して会場を後にした。
ものすごくやりきった感、はあったのだが、ちょっと彼女には失礼だったかな、と反省した。
劇団に戻るとみんな待ち構えていた。
まさか藤川のことを考えながら上の空で演技しましたともいえず、
精一杯やった、主演の子が泣いてくれた、と報告したらもう受かったかのような騒ぎになった。
あんまりぬか喜びさせないでくれ、と言ってるのに、藤川までが
「丈さんの家族も、きっと喜びますよ。」とはしゃいでいる。
家族。
藤川に言われて、故郷に捨てて来た両親のことを思い出した。
いきなりテレビに、勘当した息子が出て来たらどうするだろう。驚くだろうな。
消してしまうだろうか。それとも・・・。
「結局、最後まで告白はしなかったのね。」ママが尋ねた。
「うん。してない。」
「今日、するとか?15年越しで?」
「まさか。」俺は笑った。「もうしないよ。」
「でもまだ好きなんでしょう?」
俺は黙って微笑みを返した。
マコちゃんが哀しそうな顔でつぶやいた。
「なんだか、せつないな。」
ママはふふっと微笑んで「あら、片想いにもいいところはあるのよ。」と言った。
「え、なんですか?」
「絶対失恋しないってことよ。」
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