アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
31
-
それから、俺の闘病がはじまった。
病と闘う。と書いて「闘病」なんだけど、実際には闘ってる相手が何者なのか、
自分でもよくわからなかった。
親父のリサーチどおり、中央総合病院は、設備の整った綺麗な病院だった。
俺はまずそこで手術をうけて、体の奥深くに潜んでいた病巣摘出と同時に、
いくつかの臓器を失った。
傷が癒えると自宅療養となり、通院での薬物、放射線療法がはじまった。
これが自分で想像していたよりも、かなり辛いものだった。
手術を受けるまで元気だっただけに、まるで病院に通い始めたせいで悪くなったような
気にさえなった。
眠れない。食べられない。
強烈な吐き気は日常のことさえままならないほど気力を奪ってゆく。
イライラの矛先はどうしても両親に向いてしまう。
心配してあれこれ口を出してくるおふくろに、声を荒げて泣かせてしまうなんて
しょっちゅうだった。
そしてその後にはかならず自己嫌悪の嵐だ。
鏡を見れば、自分で自分を憐れんでしまいそうなほどやつれた姿が映る。
夜、暗がりで目をつぶれば、もしやこのまま目覚めないのではないかと恐怖に襲われる。
明け方まで悶々とし、薄明のなかでようやくうとうと眠って、目覚めとともに泣く。
目が覚めれば覚めたで、今日もまた辛い一日がはじまるのかと絶望感に襲われたのだ。
ママのいう、「片足棺桶につっこんだ」日々が、こうして続いた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
31 / 47