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俺が家業を継ぐことを決めたのと前後して、藤川から、劇団をやめて、
正式に「つるぎ会」に入会したという便りが来た。
斬られ役俳優と文房具屋。これでほんとに、道が別れてしまったな。
以前のような悲しみではなく、感慨をもってそう思った。
奇しくもママが、独立して自分の店を持ったのも、ちょうどその頃だった。
俺もようやく医者からお墨付きをもらって、酒の飲める客としてお祝いに駆けつけた。
ただしあんまり飲ませてもらえなかったけれど。
「だってジョーちゃんには長生きしてもらわないと。」
いつもママはそう言って、奇跡のように薄い水割りを作るのだ。
そうそう、ひとつ、楽しみなことが出来た。
つるぎ会はステージもこなすが、テレビや映画が主な活躍場所だ。
時代劇が主になるが、現代劇にも需要はあって、2時間もののミステリードラマなどで
チンピラや見物人、ときには犯人役などをこなす。
つまり、藤川の姿がテレビで見られるということだ。
出て来たと思ったとたん斬り伏せられたり、背中しか映らなかったりで、
探すのは至難の技だったが、
おかげで俺はすっかり時代劇と2時間ドラマに詳しくなってしまった。
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