アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
41
-
あらためて振り返って、別れてから15年も経っていたと驚嘆した。
年々、ほんとうに時の流れが早くなっていて、ついこの間終わったと思っていた
オリンピックがまたはじまって、
え、もう4年経ったのか、とビックリするような具合なんだ。
俺は鏡の前に立って自分を見た。
こちらはテレビで藤川をみてるけど、あいつは俺を見てないからな。
俺、みすぼらしくなってないかな。胸の肉も落ちたままだし、髪も張りがない。
でもまあ、もう40過ぎたんだからある程度はしかたないよな・・・。
・・・ああこれじゃ、まるで初恋の相手に再会するみたいだ。可笑しくなった。
もうどっちもいいオッサンなのに。
「そしてここがその、再会の舞台なのね。」ママの言葉に、俺は頷いた。
マコちゃんが長い睫毛をぱちぱちさせて、
「すごく楽しみ。早く逢いたい。」と興奮している。
帰る客を見送りに立ったみちこちゃんが、
「あ、ママ、雨が降って来たよ」と店内に声をかけてきた。
「じゃあ、置き傘出して来てちょうだい。あ、それとタオル。」
マコちゃんがさっと立って、奥から置き傘をもって行き、会計をすませた客に渡す。
みちこちゃんが雨に濡れて入ってくる客のために、タオルをもって
マコちゃんと入れ違いに入り口のカウンターに立った。
ちょうどその時、雨に追われるようにして、一人の男が店の中に飛び込んで来た。
「あ、いらっしゃいませ。」
着物姿のその男は、入り口でひとつ息をつくと、タオルを差し出したみちこちゃんに
「ありがとう」とにこりと笑いかけ、髪をぬぐいながらざっと店内を見回した。
やぶにらみの、鋭い眼光。
この店に後ろ暗いところがあれば間違いなく「ガサ入れ」と勘違いするような眼だ。
俺が思わずソファから立ち上がるのと。
入り口の男が俺に焦点を定めるのが同時だった。
「ジョーさん」
口の動きが、そんな風に見えた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
41 / 47