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18歳以上ですか?
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寮制とは。
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いつだって誰だって、知られたくない過去や秘密の一つや二つあると思う。
俺だってある。
出来れば、この世の事実から消えて欲しい過去も、
出来れば、誰にも触れて欲しくない秘密も、
両方あるさ。
でも、それらはいつも、俺の胸の中にしまっておけば、全てどうでもいいことばかり。
俺の名前は、唐澤 志真。
15歳のこの春から高校生になる若者である。
そんな、素晴らしき青春時代を築き上げるために、俺は一大決心をして、この学校を受験したのだが、どうもその一大決心とやらに少し見落としなるものがあったではないだろうか、と思い始めている。
俺の通う学校は……というか、学園?法人団体?は、全寮制の学校である。賑わっている市から少し離れた郊外にある、広々とした学園さま。
幼稚舎、初等部、中等部、高等部。
見事なまでに一貫教育学園である。
外部からの編入生は、なかなか狭き厳しき門をくぐり抜けてきた強者たちで、それだけ珍しいということになる。
しかも、この学園に通う人たちなかなかのお金持ちのブルジョアジーのご子息である。つまり、金持ちお坊ちゃん学校なのだ。
編入生でさえ、ほとんどはお坊ちゃん。
なんとなく勘付いたとは思うが、俺がこの学園を選んだ理由は、全寮制、という素晴らしきワードにつられたが故、男子校という致命的なワードに目が行き届かなかった。
俺の絶望は、計り知れない。
別に女がいるからいいとか、そういう問題ではない。
男子校っていうイメージがもうむさ苦しいのだ。むさいむさいむさい。
だから、女子がいた方がきっといい。
俺は、今までずっと共学だったから、こう男子校に通わなければならないとわかってから、一段と今まで自分がどれだけ恵まれた環境にいたのかが思い知らされる。
そんな今まで、というか昨日までの心情を遡りながら、俺は自分の部屋の片付けをしていた。
この私立緑ヶ丘学園は、3歳から18歳までを過ごせる由緒ある男子校である。
その中で、初等部からは親から離れて寮で過ごす決まりになっている。例外は、原則として認められていない。
俺が明日から通うことになった高等部は、今までずっと寮で育ってきた奴らがうじゃうじゃいる。
俺は今まで一人暮らしも、親から離れて過ごしたこともない。
不安しかない。
そんな俺も諦めてこうやって片付けをしているのだが、この学園は少しばかり頭がおかしいのではないだろうか。
寮は、高等部から一人部屋である。
間取りでいうと1LDK。リビングとダイニングとキッチンと一部屋だ。広過ぎる。
高等部寮には、キッチンが付いているらしい。中等部までは、食堂でみんなでご飯を食べるだとか。
俺は、今まで修学旅行とかくらいしか、みんなでご飯を食べたことがないので、少し憧れたのだが、高等部からは、食堂へ行ってもお金を払ってしかご飯は出てこない。
俺みたいな庶民はきっと、自炊しないと自己破産する。
「はぁ。」
ため息しか出ない。
全寮制に来て、とりあえず地元から離れたものの、先行きが不安過ぎる。
俺は不安を紛らわすように、鼻歌なんだかよくわからないような歌を歌うことにした。
もちろん、片付けの手は緩めない。あと少しで終わるのだ。
「♪〜〜」
不安とか心配の時は、こんな風に歌を歌うようにしていた。
きっと何にも変わらないけど、少しでも自分の気持ちを吹き飛ばすため。
自分で決めた道なのに、今更あーだこーだ言ったってどうしようもない。
学力的にはどこでもいけたじゃないか。地元を選べばどこだっていけたし、正直、この学園が一番難しかったじゃないか。
だから、どうしても行きたかった。
俺は、あそこから逃げ出すための努力をして、やっとその通りになったんじゃないか。今更、寂しいとか____
「ねえねえ、ノックしたけどさ、返事なかったから、勝手に入ったよ?君。」
俺は、はっとして後ろからした声に驚く。
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