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危険人物
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志真くんが去った後の生徒会室の話。
「宮ちゃんも、ズルいよねー。シマたんを勧誘した本当の理由言わないんだもん。」
「でもさ、ミケやん、本当の理由なんて言える?」
俺は、会長の宮園だ。
ここは、生徒会室。俺たちの巣だ。
「俺、志真くんがそういう感じにどうしても見えないんだけど……」
「それは、きーちゃんが駆け引きとか、嘘吐くのとか苦手だから、わかんないだけだよ。案外、あーゆうシマたんみたいな子が、裏の顔があったりするんだよねー。」
ミケは、人のことをよく見ている。
いつも、俺やこいつらのことを見ている。
俺らに、タメ口を聞けと言ったのも、ミケと呼べと言ったのも、ミケ本人だ。俺たちが気を遣っていたら、観察し難いそうだ。
そして、ミケはこのちゃらんぽらんそうな言い方で、さらりと核心を突いてくる。
見た目は、可愛いが、俺もたまに怖くなる。
例えるなら、棘が多いのに刺さる既じゃないと気づかないような棘を持った、可愛らしいピンクの薔薇。
「仕方ありませんよ。とりあえず、何とか危険人物の1人を管理下におけそうなんですから。」
「まさか、あの、こっちが勝って当たり前のような勝負に志真くんが受けて立つとは思わなかったけどね。あの子さ、ちょっと天然ボケ入ってるよねー。ボケボケ?って感じ。」
「翼、口悪いよ。」
危険人物。そう、唐澤志真は、この学園の新入生の中の危険人物の1人とされている。
理由は、素性がわからないからだ。
いや、それでは語弊がある。
素性はわかっている。でも、普通のサラリーマンと主婦が親、になってきるにも関わらず、唐澤志真は奨学生ではないのだ。
あんなに成績がいいのだから、奨学生なのだろうと思っていたのだが、いくら調べても学校側からの奨学金は一切無かった。
それに、唐澤志真は、A組だ。
寄付金のトップクラスのやつじゃないと、A組には入れない。しかも、編入生。しかも、一般家庭。おかしいのだ。
「でもさ、俺たち、志真くんの方で良かったよね。俺、もう1人の方だったら、嫌だったな。」
椿がそういうと、翼も頷いた。
俺たち生徒会と風紀委員は、新入生が入ってくる前に、事前に新入生のことを調べておく。その中で、気になる人物は、少し調べる。特に何もなければ、そのままだ。
危険人物、というのは、この学園に何らかの影響を与えかねない人物のことだ。
唐澤志真は、何かを隠している。それが、この学園に影響を与えるものか与えないものとはわならないが、心配するに越したことはない。だから、新入生入学前に、普段はあまり相容れない生徒会と風紀委員が、手分けして危険人物の管理監視を担う約束をした。
編入生で新入生代表の、唐澤志真は生徒会の管理監視下に置くために、俺たちは勧誘をしている。管理監視と言っても無理がある。仲間として引き入れてしまえば、少しは楽である。
「ですが、風紀委員はどのようしてもう1人の危険人物を監視するつもりでしょうか。私たちのように、仲間に引き入れるというのは、無理でしょう。」
「いや、わからないぞ。あいつらの考えることだ。案外、あっさり仲間に引き入れてるかもな。とりあえず、お前たちは、自分のところの世話しっかりしとけよ。」
「シマたん無事に、宝探しに出られるといいねー。」
唐澤志真がどんなに隠そうとも、この学園に害なすものがあれば、すぐさま取り除く。
それらが、俺らに生徒のトップに立つものの使命だ。
「少し、風紀のところへ行ってくる。」
俺はそう言って、巣を出た。
唐澤志真。
あまり笑わないやつ。
あまり喋らないやつ。
そして、何かを隠しているやつ。
秘密。
この胸にあるのは、恐怖心か、好奇心か、それとも……
今年は、波乱の年になりそうだ。
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