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デートしましょう2
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悠さんと来たのは映画館で、休日とあって人も多い。洋画から邦画、アニメまで様々なジャンルの映画が上映されていて、中でも話題作のスパイアクション映画に人気が集まっているようだ。
「悠さんも見てみたいって言ってましたよね。これにする?それとも他に気になるのがありますか?」
隣でインフォメーションを見ていた悠さんに声をかける。
「そうだな···あと気になるのはあれかな。」
「·········」
悠さんが指差したのは邦画のホラーで、これもまた小説が実写化された話題作だった。
俺の反応を面白がるようにニコニコと見つめてくる悠さん。
「はい、じゃあこっちのアクション映画ですね。チケット買ってきますから待ってて下さい。」
「うわ、スルーしやがった。」
笑顔で悠さんの肩を叩きそう告げるとクスクスと笑われた。
「蒼牙と映画館に来るの久しぶりで、すごく楽しい。ありがとうな。」
嬉しそうにそう言う悠さんの笑顔に俺の心臓が早鐘を打った。
可愛い···何でそんな嬉しくなるようなこと言うかなぁ。
ああ、もうどうしてくれようか···。
「···あんまり煽らないでくださいね。昨日から我慢してて、けっこう限界きてますから。」
「ッ、今のどこに煽られるところがあったのか分からないんだが。」
そっと耳元に囁き顔を見つめ微笑めば、困ったように笑う。
その顔は少し赤くて···キスしたい衝動に駆られるのを何とか押さえた。
そうして悠さんには椅子に座って待っていてもらい、俺はチケットを買う為に行列に並んだ。
『俺も並ぶ』と言ってくれたが、ここは俺一人で買いたい。
···悠さんが一緒だと、絶対に照れて買ってくれないだろうから。
今から買う席を思うと、ついにやけてしまう。
俺もまだ座ったことはない『カップルシート』。
その名のごとく、カップルが周りに遠慮なく二人だけの空間を楽しみながら映画を観ることができる。
いつか絶対に悠さんと座ってやろうと思っていたこの席は、値段も高いがその分魅力もでかい。
そんなことを考えていると順番は回ってきて、気づけば受付の前まで来ていた。
財布を取りだし上映状況を確認しながら受付の女性にチケットを注文する。
すると、女性は申し訳なさそうな顔で口を開いた。
「申し訳ありません。こちらの映画ではカップルシートが満席となっております。」
「え、じゃあ他の時間ではどうですか?」
「少々お待ち下さい···すみません、他の時間でも満席でございます。」
「そうですか····」
遅かった···やっぱり人気がある映画では埋まるのも早いのか。
明らかにガッカリと項垂れる俺に、女性は「申し訳ございません」ともう一度謝ってきた。
「いえ、貴女のせいではないですから···あの、他の映画でまだ空いているカップルシートはありますか?」
一応念のためと思い確認すると、パネルを操作していた女性がパッと明るい顔をしてみせた。
「ありますよ。『水底に灯る』でしたら、カップルシートが空いております。」
「え······」
その返事を聞いて俺はフリーズした。
『水底に灯る』って···あのホラー映画じゃないか!
「他にはないですか···?」
祈るような気持ちで訊ねると「他には···ないですね···申し訳ございません。」とまたもや謝られてしまった。
どうしよう···
究極の2択が突き付けられてしまった···。
『普通の指定席でアクション映画』
『イチャラブカップルシートでホラー映画』
········
············
················。
「あの、お客様···如何なさいますか?」
女性の戸惑った声が俺の注文を待っている。
「·······『水底に灯る』のカップルシートをお願いします···」
絞り出すような声でそう告げ、俺は項垂れたままカードを渡した。
俺の人生でまさか邦画のホラーを映画館で観る日が来ようとは···
だけど、『恐怖心』よりも己の欲望と悠さんの笑顔が勝ってしまったのだから···仕方ない。
それでも···誰を恨むこともできないこの状況で自分自身にため息を吐きつつ、俺はチケットを受け取ったー。
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