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やめられない
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「はぁ……」
いつものように、一仕事終えたあと休憩室に来た。
「あ、千尋くん。お疲れ様」
俺よりも前からここで働いていた先輩の累さんが先に休憩室にいた。
「お疲れ様です」
座っている累さんの隣に座る。
「どう?」
「何がですか?」
「仕事、慣れた?」
「まぁ、ぼちぼちと。…慣れたくはないですけど」
「あはっ、確かにそうだね」
累さんはいつも俺をはげましてくれて、いつも笑ってる。
累さんが弱音を吐いたりしているところを見たことがない。
必死に取り繕っているのか、この仕事が本当に好きなのか。もちろん前者だろうけど。
「あの、累さん」
「なに?」
「累さんって、ここをやめたいとか、こんな仕事嫌だって思ったりしないんですか?」
「そんなの…思わないわけないじゃん」
そう言った累さんの笑顔は、いつもの笑顔だけど、少し辛そうに見えた。
「僕だって、ここに来たばっかりの時は、毎晩部屋で泣いてた。なんで僕があんな男の人たちの相手をしなきゃいけないんだって。悲しくて、悔しくて…」
「……」
初めて聞く累さんの本音に、返す言葉が見つからない。
そんな俺を見て、累さんが微笑んだ。
「でも、ここを辞めるのは簡単だけど、辞めたら僕たち生きていけないでしょ?それは嫌でも分かりきってることだから」
「そう、ですね…」
「だったら、暗い顔してるより笑ってた方がいいかなっていう、僕の持論ね」
累さんは誤魔化すように笑った。
確かに、悔しいけどこの仕事がなければ、俺はきっとどっかの路上で飢え死にしてる。
頭では分かってるけど、すんなり受け入れられるようなものでもない。
でも、俺に拒否権はない。
どうせ、やめられないんだ
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