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15.✩一緒に
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✩✩✩✩
「楓さん」
「……なに」
「…………っ、何でそんなに離れてるの!?」
どうにか折り合いをつけて楓さんを寝室のベッドで寝かせる事には成功したけど、楓さんは俺に背を向けて落ちるんじゃないかと思うほどベッドの端に寄っていた。
これ、気のせいでも何でもなく絶対に避けられてる……。無理して俺のお願いを聞いてくれたのかな……。
「……俺と寝るの、そんなに嫌だった?」
「え?」
「やっぱりベッド分けた方がいい?俺、楓さんに無理強いしてまで一緒に寝たいとは思わないんだけど」
「無理してないよ。まあ我慢はしてるけど……。俺もね、本当は旭の隣で寝たいんだけど……、そんなに近くで寝たらまた何かしちゃうかもしれないでしょ。そうなったら困るのは旭だよ?」
「そう、だけど……」
手を伸ばしても届かない背中にどうしたものかと考える。
一緒に寝たくないから離れているんじゃなくて、近づくと迷惑をかけるかもしれないから離れている、なんて言われてしまえば、もう為す術もない。何をされてもいいから近くで寝たいとまでは特に思っていないし、俺のお願いを聞いてもらったんだから、楓さんがそうしたいのなら受け入れるべきなんだろうけど……。こんなに離れているなら、別のベッドで寝ているのとそう変わらないんじゃないか。こんなに近くにいるのに、まだ壁を作られているみたいで無性に寂しくなってしまった。
「別に離れてるつもりはないけどなぁ。そんなに遠く感じる?」
「遠いよ……。それに、そんな所で寝たら落ちちゃうよ?もっとこっちの広いところで……」
「大丈夫。このくらいの高さだったら落ちても少し痛いだけで済むから」
それ大丈夫じゃないじゃん……と言いたくなった言葉を飲み込んで、どうすれば安全にかつ近くで寝てくれるかを考える。
楓さんには無理も我慢もしてほしくない。さっき、俺の隣で寝たいって言ってくれたことが本心なら……。
「……離れてるつもりが無いなら、俺がそっち行っても文句無いよね?」
「はっ?あ、ちょ……落ちる、落ちるから!」
前言撤回。俺が困るからって理由付けをしていたみたいだけど、もう、この際何をされてもいいから楓さんのそばで眠りたい。
起き上がってにじり寄って行くと楓さんは逃げるようにして更に端に寄った。シーツにしがみついて必死に落ないように耐えている。
「なんで逃げるの。……あ、こうすれば逃げられないか」
「うわっ、バカ、離せって!」
抱き締めるように引き寄せると、いとも簡単に楓さんが俺の腕に収まった。俺より身長が高いししっかりした体つきの割には意外と軽くて、そのままベッドの真ん中に移動する。
ぎゅーっと腕に力を込めて逃げられないようにしてやると、諦めたのか抵抗を止めて目を瞑って大人しく俺の腕に身を委ねてくれた。触られるのは嫌じゃないみたいで良かった。
「楓さん、なんで逃げるの?本当は俺のこと嫌い?」
「何で何でって……まったくお前は……。腐れ縁の幼馴染に今更そんなの言うか。ほら、隣に来てやったんだからもう寝なさい」
「ああもう、またそうやって、すぐはぐらかすんだから……」
逃げるつもりはないらしいと分かって抱き締めていた力を緩めると、楓さんは俺の腕から抜け出して大きなタオルケットをかけてくれた。そのまま楓さんが入ってくるのを待っていたけど、何故かベッドから下りていく。はっとして起き上がり楓さんを探すと、寝室から出ようとしていた。
「え、楓さん……!?」
「喉渇いたから水飲んでくる。ちゃんと戻ってくるから先に寝てなよ」
カーテンの隙間から零れた月明かりに照らされて、楓さんの微笑みがひどく妖艶に見えた。楓さんが寝室から出て行っても、俺は心臓を鷲掴みにされたみたいに動けなかった。
おかしいな、さっきまでは大丈夫だったんだけど……。胸を押さえるようにしてタオルケットに潜った俺はなかなか寝付けなかった。
やっとうとうとし始めた頃、微かに寝室のドアが開く音がした。少ししてから隣に人の気配がして、重たい瞼を持ち上げてうっすらと目を開く。マットレスに片腕を付いて優しく笑みを浮かべる楓さんがいた。
「かえでさん……おやすみなさい……」
「ん……おやすみ、旭」
さらりと頬を撫でられたのが気持ちよくて、楓さんを手探りで探してみると自分から寄ってきてくれた。落ち着く匂いと幸せな温かさに包まれて、楓さんに抱きつくようにして眠りについた。
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