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23.✩彼女
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✩✩✩✩
正直、楓さんは勘が鋭いからバレてると思った。俺の思ってることも考えてることも、何で悩み落ち込んでいるのかも。きっと全部バレてる。
それなのに楓さんは全部知ってる上で、意地悪く「どうかしたの?」なんて聞いてくる。さらには前の俺の癖とかも持ち出されて結局俺が折れた。
多分俺は楓さんの手のひらで転がされてる。今も、きっとこれからも楓さんには勝てない。でもそれが嫌じゃない。
「……楓さんの、彼女って……どんな人?」
ああ、なんでこんなこと聞いてるんだろ。俺には関係ないのに。関係ないって分かってるのに、楓さんが凭れかかってる左肩が熱い。楓さんを意識してしまって心臓が壊れるんじゃないかってくらい鳴ってる。
これじゃまるで……その、楓さんのことが、す、好き、みたいな……。
楓さんだって、何言ってんだこいつって思ってるに違いない。
「旭は俺の恋人に興味があるんだ?」
「べつに、そういうわけじゃないけど……。だって楓さん、俺が知ってる限りデートとか行ってないじゃん」
「あー、なるほど。……つまり彼女が可哀想って?」
「俺を構ってるんだったら、その、彼女さんとの時間をですね……」
「………ふっ」
尻すぼみになった俺の言葉を楓さんは鼻で笑って一蹴した。不思議に思って隣にいる楓さんを見たけど、ここからじゃ楓さんの表情は分からない。
「旭は優しいね。……でも残念ながら俺の恋人は簡単には会えない所にいるんだよ」
「………遠距離恋愛ってこと?」
「まあ……そうだね。ある意味、遠距離恋愛かな」
遠距離恋愛……。簡単には会えない所にいるからデートとかも出来ない。
うん、それなら納得できる。でも、それなら尚更、電話やメールをすればいいんじゃ……。
「お前が悩むことじゃないよ」
「……う、ん……」
楓さんは体を起こすと俺の頭を撫でた。楓さんに撫でてもらうのは心地がいい。こうやって楓さんに撫でられるのは、ここにいていいって言われてるみたいで本当に安心する。
俺ばっかりいつもこんなことしてもらって……。きっと彼女さんだって楓さんに会いたいだろう。彼女さんに申し訳ない。
そう思いつつも拒否することなんてできなくて、しばらくの間頭を撫でる楓さんの手に身を任せていた。
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