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24.✧答え
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✧✧✧✧
『……楓さんの、彼女って……どんな人?』
あの流れで旭がそう言うことは予想していた。
今の旭がそれを言うのに勇気が必要だったのかも分かる。だけど何も知らない振りして聞く俺は、自分でも相当意地悪だと思う。
とりあえず『彼女』とは遠距離恋愛という事にしておいた。あながち間違ってもいないし、俺自身そう思えば少しは気が紛れる。本当に、少しだけ。
旭はそんな説明でも納得したらしくそれ以上追求してくることは無かったけど、撫でられてる間ずっと困ったような顔をしていた。
見たことも会ったこともない『彼女』に申し訳ないと思うだなんて、旭も随分可愛くなったものだ。
「楓さんご機嫌だね。鼻歌、歌ってる」
風呂上がりに夕食の洗い物をしていると、入れ違いで入っていった旭がもう上がったらしく頭を拭きながらダイニングへ入ってきた。
「旭、大学へ行く準備はできてきた?」
「うん、ほとんどできてるよ。……………」
「ん?どうした?」
旭は何か言いたそうな顔をして俺をじっと見ている。また何か悩みでもできたのだろうか。
洗い物を終えて旭の話を聞こうとリビングへ移動すると、旭はどこか浮かない表情で俺の後をついてきた。
旭をソファーの隣に座らせ向き合う体勢になって髪を拭いてやる。しばらくそうしていると、目を瞑ってされるがままになっていた旭が口を開いた。
「……俺、ちゃんと大学生できるかな?」
「うん?」
「……ちゃんと友達とやっていけるかな?講義とかついていけるかな?」
「お前なら大丈夫だよ。友達はみんないい人だ、って前のお前は言ってたし、旭は地頭がいいから勉強だって心配ないだろうよ。でも、無理に頑張らなくていいから。辛くなってもう駄目だ、って思ったらやめればいい」
不安そうに揺れる瞳が痛々しかった。記憶をなくした旭にとってこの家から出ることは、一人で異国の地に放り出されるようなものだ。そりゃあ心細くて怖いよな。
髪を拭いていた手をゆっくりと背中に回し、そっと旭を抱き寄せる。
「かえでさん……」
頭を撫でてやると強ばっていた旭の顔が綻んだ。撫でられるのが好きらしい。……前の旭もそうだった。
こんなことをすれば悲しくなるって分かっているけど、どうしても今の旭に前の旭を重ねてしまう。
同じ旭だけど中身が違うと捉えるべきか。
中身は違うけど同じ旭と捉えるべきか。
まったく別の旭と捉えるべきか……。
経験が乏しい俺はこういう時どうすればいいのか分からなくて、まだ答えを出すことができなかった。
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