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25.✩年相応
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✩✩✩✩
今日からついに大学が始まる。まだ不安が無くなったわけじゃないけど、楓さんがずっと励ましてくれてたから最初の頃よりも全然マシになった。
「旭ー、準備できた?」
「うん、できたよ」
俺は大学のことを話された日から、講義の教科書やノートを読み込んでいた。前の俺は勉強熱心だったのか、ただのメモ魔だったのか知らないけど、いたる所に書き込みがあって助けられた。
それだけじゃない。
読んでるうちに記憶が戻ったというか、初めてオムライスを作ったときみたいに自然と思い出せた。だからまあ、勉強面は特には心配なさそうだ。
通学に使っていたリュックを背負って玄関に行くと、いつもよりお洒落な恰好をした楓さんが待っていた。部屋着やスウェットではなく年相応の服を着ているから、今時の若者って感じがする。なんだか勝手に自分よりもすごく大人なイメージが出来ていたけど、実際は少ししか離れてないんだよね。
「楓さんもどこか行くの?」
「んー?旭送ってったらそのまま仕事。会社に顔出してくる」
「えっ!?会社!?」
「なんだよ、そんなに驚くこと?」
だって今まで家で仕事してたから、てっきり自宅でできる仕事だと思ってた。
会社ってことはサラリーマンとか?……楓さんがサラリーマン……でもそうなると俺が家に居た一ヶ月間は会社どうしてたのかな……。そんな長い期間休めないよね。
「うーん、何て説明したらいいか。サラリーマンでもないし、普通に家でできる仕事だから休んでたわけじゃない。……まあ、そのうち話すよ」
背中を押されて玄関を出る。珍しく歯切れが悪いけどどうしたのだろうと思っていると、楓さんは足早にエレベーターの方まで行ってしまった。
前から思っていたんだけど、楓さんはマンション内の共用場所へ一歩でも出ると無駄な会話をしない。他の住人に迷惑がかかるから、とかそれだけじゃない気がする。家にいる時とは違って、俺が話しかけても一言二言でしか返ってこないから会話をする気がないのは明白だった。
エントランスで降りるのかと思いきや、エレベーターは地下駐車場で止まった。
澄ました顔で歩く楓さんの後を追いかけると一台の車の前まで来た。
「後ろ、乗って」
「え?あ、うん」
楓さんはポケットからキーを取り出して開けると、俺に後部座席に乗るように言った。車持ってたんだ?退院した日はタクシーだったから初めて知った。というか俺が退院してから徒歩で行けるような範囲にしか出かけてなかった気がする。
楓さんは運転席に乗り込みエンジンをかけた。車はゆっくりと進みだして、楓さんは慣れた手つきで運転している。
よく女性は運転している男性にときめく、みたいなことを言うけど、現に運転してる時も楓さんはかっこいいし、その気持ちがなんとなく分かる気がした。
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