アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
26.✩もう一人の
-
✩✩✩✩
マンションから三十分ほどで大学に着いた。大学の敷地内にある駐車場で降りる。楓さんは車内で誰かに電話をかけていた。時々笑顔になって話している。
電話を終えると外で突っ立っている俺の所へ来た。
「ちょっとここで待ってようか」
「誰か来るの?」
「うん、紹介したい人がいるんだ」
俺に紹介したい人って誰だろう。さっきの電話相手かな?
言われた通り待っていると、駐車場に赤い軽自動車が入ってきて楓さんの車の近くに駐車した。
何だろう、と思っていると車から髪の長い綺麗な女の人が出てきた。そしてその人はこれまた綺麗な笑顔で俺たちの方に駆け寄って来た。
「おはよう。待たせてごめんなさいね。あら、そういえば三人揃うのって久しぶりね。元気だった?」
「おはようユズ。まあ元気だったよ。今日から旭のことよろしくな」
「分かってるわよ。ふふ、私にまかせなさい」
ユズと呼ばれた女の人は楓さんと親しいようで、二人とも笑顔で話している。美男美女が並ぶと絵になるなぁ、と二人を眺めているとユズさんが俺を見た。
「旭も、大変だったわね。今はもう大丈夫なのかしら?」
「ああ、ええと、はい……」
「ユズ、自己紹介は?」
「そうね、忘れてたわ。久しぶりだけど初めまして。私は榊原柚里、柚子湯の柚に古里の里で柚里ね。あなたと楓の幼馴染よ。あなたに起こったことは全部、楓から聞いてるわ。これからよろしくね」
柚里さんはにっこりと笑って手を差し出してきた。どうしようかと楓さんを見ると楓さんは微笑んで頷いた。
もう一人の幼馴染……。『久しぶりだけど初めまして』ってそういうことか。
差し出された手を握ると優しい力で握り返された。楓さんの大きくて骨ばった男らしい手とは違う、細くてやわらかい女性らしい手だ。
「よろしくお願いします、柚里さん」
「ああ、私、あなたと同い年なの。だから敬語もさん付けも禁止ね、『柚里』って呼び捨ててちょうだい。分かった?」
「わ、分かった。柚里……」
「ふふ、それでよし!」
満足そうに柚里はまた笑った。よく笑う人だ。俺の中の柚里への印象は「クールで綺麗な女性」から「よく笑う美人な幼馴染」へと変わった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
26 / 322