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29.✩カップル
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✩✩✩✩
記憶を無くしてから初めての大学生活は、柚里のサポートもあって何事もなく過ごすことができた。友達もたくさんいてみんな優しくていい人たちだったから、これからの学生生活に心配はいらなそうだった。
一日の講義を終え柚里や友達と別れて、今朝の駐車場で楓さんが来るのを待っている。
市倉遼介とは学部が同じだけで学内で会うことはあまりないと柚里が言っていた。
柚里とは学部学科が同じでほとんどの授業も一緒らしい。
柚里によると、柚里と前の俺は共通の将来の夢があって幼馴染ということもあり、大学生活では一緒にいることが多かったという。それこそ周りから彼氏彼女だと思われるくらいに。
実際は柚里は俺など眼中になくて、俺にも好きな人がいたから付き合ってはいなくて、でも柚里も俺も言い寄ってくる人たちから自分を守るためにお互いを利用?していたそうだ。カップルに見られていた方が何かと都合がいいからこれからもよろしく、と言われた。
さて、大学生活初日を終えて一つ気になることがある。
柚里とカップルに見られた方がいい、ということ。
俺には好きな人がいたはずなのに、そう見られた方が都合がいい理由が分からない。
周りの友達に柚里とカップルだって思われてるってことは、好きな人にもそう思われている可能性だってある。もちろん相手が同じ大学生だとは限らないけど。
………叶わぬ恋だったのか、それとも叶っちゃいけない恋だったのか。
残念ながらその好きな人が誰なのか、友達はもちろん柚里にも言っていなかったようで、柚里には『さあね』と言われた。
記憶を無くした今、その好きな人のことも思い出せないしどうすることもできないから、とりあえず柚里の言う通り『恋人ごっこ』を引き継ぐことになったけど。……本当にそれでいいんだろうか。
「あーさーひー?」
「うわっ、あ、か、楓さんっ!?」
「『うわっ』って何だよ?失礼だな」
いつの間に来ていたのか、目の前には楓さんの乗っている車が止まっていた。どうしようもないことを考え過ぎて周りが見えていなかった……。
「大学どうだった?初日を終えての感想は?」
今朝と同じように後部座席に乗り込むと楓さんがバックミラー越しに聞いてきた。
「楽しかったよ。友達もみんないい人だし、勉強もこのままいけば心配ないと思う」
「なら良かった」
思ったことをありのまま伝えると楓さんはそう微笑んで車を発進させた。
運転してる楓さんに今日あった事を話したり途中でスーパーに寄ったりして、大学を出てしばらくしてからマンションに着いた。
「先に部屋行ってて」
そう言われ入り口で降ろされた俺は、車が地下駐車場に入っていくのを見送ってエントランスに入った。コンシェルジュのお兄さんに挨拶してエレベーターに乗る。
「あれ…………?」
廊下を進んで行くと、俺らの部屋の前に女の人がいた。目を凝らしてよく見てみると今日一日一緒にいた柚里だった。
柚里は友達と遊びに行くとか何かで駐車場に行く途中で別れたけど、なんでここにいるんだろう。
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