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30.✩大事な話
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✩✩✩✩
少し離れたところから柚里を見ていると、彼女はそわそわした様子でインターホンを鳴らした。
「あれ、ユズ?」
「あ、楓さん。そう、柚里がいるんだけど……。なんでここにいるんだろう?」
楓さんが後ろからやってきて俺と柚里を交互に見た。楓さんも何も聞いてないみたいで、何でだろう?と不思議そうな顔をした。
その間も柚里はこちらに気付かずに、そわそわとドアの向こう側を伺っている。
「ユズ」
「っえ、楓?なんでここに……」
「それはこっちのセリフだよ」
楓さんが声をかけると柚里はビクッと肩を揺らした。やっと俺たちに気付いた柚里は、幽霊でも見るかの様な目で楓さんを見た。
「何だよその目は?」
「……いえ、別に」
「まぁいいか。長くなるんだったら部屋で話す?」
「ええ、お邪魔させてもらうわ。でも、私が用があるのは旭の方なの。今、時間大丈夫?」
用があるなら大学とかメールで話せばいいのに、と思ったけど、訪ねてくるくらいだから直接会って話したい事なのかな?
時間はたくさんあるし大丈夫だと伝えると、柚里はほっとしたように頷いた。
俺に用があるということで俺の部屋に来た。
この部屋にはソファーとか無いからそのまま二人ともラグの上に座る。しばらくすると柚里はゆっくりと口を開いた。
「さっき……学校で旭と別れた後なんだけど、市倉にからまれて……」
「市倉に?」
「そう。何かと思ったらあいつ、『旭、元気そうだね。良かった』って」
「それがどうかしたの?」
元気そうだね、と言っていたところを聞くに、市倉は俺が入院してたことを知ってるのかな?人づてに聞いていてもおかしくないか。
「『それがどうかしたの?』じゃないわよ!あいつ今朝のカフェにいたらしくて、旭が記憶喪失なのにも気づいたらしいの。その上であいつ『元気そうだね』なんて!……事故だって言うけど、旭の記憶が無くなったのだってあいつのせいなのに……」
「えっと、ちょっと待って、どういうこと……?」
話が見えなくて説明を求める。柚里は深呼吸して俺の目を見据えた。
「あなたが大学にも慣れて、落ち着いたら話そうと思ってたんだけど……。私が思ってる以上に市倉は危険かもしれないわ」
「……え?」
「あなたが大学内の階段から落ちた時、市倉が一緒にいたのよ。私は友達から市倉とあなたが人の少ない校舎に行ったことを聞いて……。朝も言ったけど、あなたは市倉を嫌っていたから自分から二人きりになんて、絶対にならないと思った。市倉も何か企んでいるようだったし……。それで急いで行ったら……」
駆けつけた柚里が見たのは、階段下で倒れる俺と走り去る市倉遼介の姿だった。
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