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33.✧前は
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✧✧✧✧
夏休みが終わってから二週間が過ぎた。
旭も大学生活を楽しんでいるようで毎晩その日にあった事を俺に話してくれる。今日も夕飯を食べ終えて洗い物も風呂も全部済ませてソファーでテレビを見ていると、旭がやってきて話を聞かせてくれた。
前の旭は大学の事なんて全然話してくれなかったから交友関係とかも知らなかったけど、今の旭の話からするとやっぱり友達には困っていなかったみたいだ、よかったよかった。
「――それでね、柚里の友達の寺岡さんって女の子が、俺のことカッコイイって言ってくれて」
「お前大学でもモテモテだったの?若いっていいね。楓さんちょっと妬けちゃうなぁ」
「何言ってるの、楓さんだって……」
「はいはい」
昔から旭は愛想が良くていわゆるクラスのムードメーカー的存在だったらしい。勉強も運動もできるし顔も良いし、二つ上の俺の学年でも噂になるくらいに男女問わず人気者だった。
高校に入ってからはぐんと身長も伸びて男らしくなったせいか、かなりモテていたようだった。一週間に何度か旭が女子から告白されているのを目撃したこともある。クラスの子に旭を紹介してほしい、なんて頼まれたこともあったな。
それなのに、幼馴染の俺にはなぜか冷たくて、学校で会っても他人のふりをされるし話しかけても無視されるしで、なんていうか親離れされた気分だった。
でも『それはただ単に旭がツンデレなだけなのよ』と柚里が言っていたけど、本当に前の旭はその通りだったと思う。……今の旭にはツンデレなんて要素、どこにもなさそうだ。
「でね、講義が終わったあとに……あ、ごめん、俺ばっかり喋っちゃったね」
「なんで謝るの、聞かせてよ。毎晩の楽しみなんだから」
「なら良かった。……あの、楓さん……」
「ん、何?」
さっきまで楽しそうに話をしていた旭は何か言いたげに俺を見つめてきたものの、「……なんでもない。やっぱり課題しなきゃ」と言ってリビングから出て行ってしまった。
柚里が家に来た日以降、時折何とも言えない複雑な表情を見せることが多くなった。何だろう、また悩み事でもあるのだろうか。
あの様子じゃ俺に話してはくれなさそうだから……ここは柚里にでも頼んだ方がいいな。余計なお世話かもしれないけど、前の旭も柚里にだったら何でも話していたようだし。困ったときの柚里だ。
早速、柚里にメールするためにスマホを手に取った。
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