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38.✩もらえない
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✩✩✩✩
………いや、コレを自由に見ていいと言われても!だいいち、パッケージの絵面からしてやばいやつだ。とにかくこんなはしたないのは見ちゃいけない。
あれ、でもこういうのが家にあるってことは……楓さん、こういうのが好きなのかな………?
「旭、大丈夫?具合悪い?」
「うわぁぁぁあっ!!楓さん!?」
いつの間にか背後にいた楓さんに声をかけられて飛び上がった。慌ててDVDを後ろに隠す。
し、心臓が止まるかと思った……っていうか楓さん、リビングから出て行ったんじゃなかったの!?
猫のように身のこなしが軽い楓さんはかなりの頻度で俺を驚かしにくる。今回もそれだったのだと気づいて盛大にため息をつきたくなった。
「なに隠したの?AV?」
「ひっ!?な、んも隠してないですっ!」
的確に言い当てられて心臓が跳ねる。
これもう絶対バレてるじゃん……。当然、楓さんはこういうのがここに置いてあることは知っているだろう。
楓さんはとても楽しそうに俺を見ている。薄々思ってはいたけど、楓さんって実はサディストだよね……?それはそれは獲物をいたぶることに快感を覚える悪魔のようだ。
「…………?楓さん、ほっぺどうしたの?」
にこにこしてる楓さんの頬が片方だけ赤くなっていることに気がついた。
お酒……の匂いはしないから飲んではなさそうだし、暑くても楓さんはあんま表に出ない。それに楓さんは色白だから赤いのが余計に目立つ。
「ああこれ?こう、パシンって」
楓さんは口で説明しながら手のひらをパーにして空を切った。
え、なに、平手打ちされたってこと?
楓さんをソファーに座らせて状態を確認する。赤くなってるだけで腫れてはいない。よかった……。
「痛い?冷やせばマシになるかな?ちょっと冷やすもの持ってくるね」
「気にしなくていいのに」
本人はそう言ってるけど俺が気になるんだよね。氷とか持ってきた方がいいかな。でも腫れてはいないからそれよりも濡らしたタオルにしよう。
「はい、しばらくこうしておけば大丈夫かな」
「ありがと。はぁ、冷た……」
楓さんの隣りに座って叩かれた頬に、冷たく濡らしてきたハンドタオルを折って当てる。
楓さんはだらんと体から力を抜いて目を瞑ってされるがままになっている。
しばらく当ててみてそっとタオルをどかした。さっきよりはいくらか赤みは引いている。
楓さん、睫毛長いなぁ……。肌も色白で綺麗だし、髪も傷んでなくてサラサラしてる。
ほんと、そこら辺の女子より綺麗だ。市倉みたいに男が惚れるのも無理はない。……まあ、俺も惚れてるけど。唇も荒れてなくて綺麗な色をしている。いつも『旭』って呼んでくれるその唇で、俺には絶対言わないような言葉を彼女さんに言うのかな……。
『愛してる』とか『好きだよ』とか?
俺はそういう言葉をもらえない。
俺が女だったら少しはチャンスがあったのかも。
そう考えるとなんとなく、女性である柚里が羨ましく思えた。一番身近にいる女の人が柚里ってだけで、柚里を羨んでもどうにかなる問題じゃないのに。内面だけは女々しいのになぁ……。
骨張った自分の手を見てなんだか切なくなった。
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