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42.✧気持ち
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✧✧✧✧
瞑っていた目をそっと開くと、旭がどこか悲しげな目で俺を見ていた。
「そんなに見つめて、言いたいことでもあるの?」
「言いたいこと?なんで?」
眠気でぼーっとする中そう聞くと旭はさっきの目のまま微笑んだ。
その笑顔があまりにも儚くて、またどこかに行ってしまうんじゃないかと少し焦った。
「なあ旭。俺さ、もっと今のお前と向き合ってみようかなって思うんだけど」
「えっ……?」
旭の目をしっかり見て言うと旭は目を見張った。途端に嬉しそうに顔が綻ぶ。
「楓さん……!」
嬉しい、と本当に嬉しそうに満面の笑みで旭は笑った。良かった、笑顔になって。
手を伸ばして旭の頭を撫でると、それを追いかけるようにして旭は俺の肩に凭れてきた。
ああ、本当に可愛いな。……さっきから旭のこと、可愛いしか言ってない気がするけどまあいいいか、事実だし。
心地よい雰囲気についうとうとしてしまう。
遠くで旭が俺の名前を呼んで何か言いかけた気がするけど分からなかった。
「楓さん…………」
旭がもう一度俺の名前を呼ぶ。
目を瞑っていても顔に影が落ちたのが分かった。たぶん俺と旭の距離は何センチもないだろう。簡単にキスできる距離だ。
小さく身じろぐとすぐに影は無くなって、隣で旭が大きなため息をついた。
目だけで横を見ると旭はこちらに背を向けて体育座りをしているようだった。項垂れているように見えなくもない。俺はそのまま横に倒れていって旭の背中に寄りかかる。
俺が居心地のいい場所を探してもぞもぞ動いている間、旭はじっとしていた。
男にしては華奢で固い。でも居心地は全然悪くない。
後ろから旭のお腹に手を回してぎゅっと抱きつくと、抱き枕みたいでちょうどいい。
旭を病院から連れてきた日も、旭がいることに安心してこうやって抱きついたっけ……。
たしか『仕返し』なんて言ったけど、本当は旭がいるのが嬉しくてやっちゃったんだよな。
「キス、してくれないの?」
俺はいったい何を言ってるんだ、と寝ぼけた頭でも思った。ビクッと肩を揺らした旭は両手で顔を覆ってしまった。さすがにやり過ぎたかと少し焦ったけど、旭の耳は真っ赤になっていて照れているらしい。ほんとにこいつは……。
くすくす笑いながら旭の肩を引く。林檎みたいに真っ赤になった頬を撫でて旭の額に口付けた。
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