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54.✧仔犬
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✧✧✧✧
旭と飲むことにした俺は市倉に『ごめん予定入ってるからまた今度ね』と断りの返信をした。市倉は残念がってたみたいだけど、俺は旭と宅飲みできることになって嬉しい。すごく楽しみだ。
……そういえば前の旭とも酒を飲んだことがないから、旭がどれくらい飲めるのか知らないな。成人してからも旭は酒に興味を示さなかったし、友達とご飯に行っても一度も飲んで帰って来たことはない。俺はまあまあ飲めるけど旭はどうなんだろう。
ふと聞きなれた歌が聞こえてきて顔を上げると、テレビ画面の中で人気男性アイドルユニットが歌っていた。
「この人たち最近有名だよね。いろんな番組出てる」
「そうだね」
「引っ張りだこで休んでる時間あるのかなぁ?若いのにお仕事大変だね」
「そうだね。旭も学校頑張らないとな?」
「う……俺だって頑張ってるよ!」
若いっていってもこの人たち、旭より一つ歳上だけどね、と心の中で呟き立ち上がる。俺に体を預けていた旭は「わ!?」とバランスを崩してソファーに倒れた。
なんだか嫌な予感がしたから捕まる前にさっさと寝てしまおう。
後ろでソファーに取り残された旭が「もう寝ちゃうの?」と寂しそうに言ってきたけど、頷いておやすみと一言だけ告げてドアを閉めた。
旭はあのまま夜ふかしをするんだろうと思っていたけど、俺がベッドに入って本を読んでいるとすぐに寝室に来た。ドアの所に立って俺の様子を窺っている。
「旭」と名前を呼んで自分の隣を叩いてこっちに来るように伝えると、旭は嬉しそうに俺のところへ来た。でっかい犬みたい。レトリバー系の。
「楓さん……」
「んー?なに?」
「楓さんってどんな仕事してるの?」
……嫌な予感が的中した。本なんか呼んでないで寝たふりでもいいからしておけばよかった。じっと見つめてくる旭に本を閉じて向き合う。
「俺の職業なんか聞いてどうするの?」
「え……あ、いや、気になっただけ……ごめんなさい」
旭の目を見つめ返して声のトーンを落としてそう問うと、旭は叱られた仔犬みたいにしゅんとした。ベッドの横に置いてある間接照明に照らされて、目を伏せた旭の顔には深い影が落ちている。
前はその妖艶な顔に煽られて身体に熱が溜まった。それは今でも変わらなくて、久しぶりに見た表情にあの独特な熱を思い出しそうになって、誤魔化すように慌てて言葉を紡ぎ出した。
「はは、怒ってないよ。また今度教えてあげる」
「まさか、からかったの?……楓さんひどい」
旭は恨めしそうに上目遣いで睨んできて、その頭を撫でると今度は猫のように擦り寄ってくる。
しばらく撫でていると旭は眠ってしまった。幸せそうに眠る旭が愛おしくて、その額に優しくキスをして俺も眠りについた。
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