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58.✧気づく
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✧✧✧✧
指でそっと肌を撫でると零れる吐息。
名前を呼ぶと必死に答えようとする甘い声。
快感の波に呑み込まれそうになっている濡れた瞳。
旭のすべてが俺を煽っていた。酔った旭は目がとろんとなってふにゃふにゃしてて、ものすごく可愛かった。本当に旭は俺を煽る天才だ。
「旭……」
「はっ、ん……かえでさん……」
感度の良い身体はどんどん高みへ上り詰めていく。
触っているだけでこんなに溶けるんだったら、これ以上の事をしたら今の旭はどうなるんだろう。
……そういえば前の旭もこうやってどろどろに溶かしてやるとすごかったなぁ。
「っ!!はぁ……ねぇ、かえでさん……」
「ん?どうしたの?」
旭は俺の胸を押し返して少し距離を取った。
俯いた旭の表情は見えないけど、肩で息をして乱れた呼吸を整えている。
「……キス、して……?」
「…………キス?」
まさか旭からキスを強請られる日がくるなんて……。
前の旭なんてこっちの都合も考えずにしたい時にしてきたから、こうやって強請られるとすごく新鮮だ。
ああもう本当に……このまま最後まで事に及んでしまいたい。
「いいの?」
「うん……して?」
熱に溶かされた目でじっと見られて、心臓がどきりと高鳴った。見つめ返せば淑女のように恥じらって目を伏せる。そんな表情を見せられたのは初めてで、それはきっと記憶をなくして真っ白になったこの旭にしかできない顔だ。
旭の頬に手を添えて顔を近づけていくと旭は瞼を閉じて、緊張しているのかシャツの裾をぎゅっと掴んでいた。初々しい反応にまた胸がドキッとする。
ゆっくりと近づいていき、お互いの吐息がかかるまでの距離になった。
『俺以外とそういう事しないでくれる?』
もう少しというところでふいに声が聞こえてはっとなった。
いや、聞こえたんじゃない。思い出しただけだ……。
「楓さん……?…………やっぱり、今の俺とはできないんだね」
旭はやんわりと俺の肩を押し返して微笑んだ。傷ついたのを隠すような笑い方で、胸が押し潰されそうになる。
……できない。
できなかった。
突然旭の声がしてそれ以上近づけなくなった。前の旭に言われたことを、どうして今……。
「楓さん、俺ね、気づいちゃった。今の俺と向き合うって言ってくれたけど、楓さんの心はまだ前の俺にあるんだよ…………」
「旭……」
「前と今の俺を重ねてる時があるでしょ……。ねぇ、どうして俺じゃだめなの?どうしたら今の俺を見てくれるの?期待ばっかりしちゃって、苦しいよ……」
涙で頬を濡らした旭は縋るように俺のシャツを握りしめた。
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