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65.✧静輝
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✧✧✧✧
木久静輝の第一印象は最悪だった。それは今でもはっきり断言できる。
『へぇ、君、平坂楓って言うの。男のくせにずいぶん綺麗な顔してんのな。……ねぇ、抱かせてよ』
これが静輝に初めて言われた言葉だ。部活のミーティングが終わったあとに声をかけられて、ひっそりと内緒話をするように言われたのがこれだ。
『…………は?』
ニコニコ楽しそうに笑う静輝に、顔を引きつらせながらどうにかそう返したのを覚えてる。初めての会話がこんなのだったから、静輝に対する好感度メーターはゼロを振り切ってマイナスだった。
静輝と出会ったのは俺が高校一年の時。
俺の一個上の先輩で、委員会と部活が一緒だった。何かと俺に構ってくる先輩で、先輩命令とか言って事あるごとに俺を呼び出した。
校則は守るし成績も常に上位でおまけに生徒会。人当たりが良くていつもクラスの中心にいる完璧優等生、という周りの生徒や先生方の評価に反して、俺だけに見せる本性は最悪だった。
俺にはただの八方美人にしか見えなかったけど、本人曰く『八方美人で猫を被っているんじゃなくて、どれも本当の俺』らしい。
たしかに俺に良いように見られようとはこれっぽっちも思って無さそうだったし、俺に対して取る行動や言動は普通の先輩と思えるものじゃなかった。
けど、日常生活で関わる分にはしっかりした頼れる先輩だったから、俺はいつの間にか気を許してしまっていた。
初めのうちは呼び出しを無視して逃れようとしたけど、静輝はあらゆる手段を使って自分の元に俺が来るように仕向けた。
一学期が終わる頃には、俺はもう諦めていて無駄な抵抗はしていなかったと思う。
毎日のように呼び出され行われるパワハラと言う名の度の過ぎたセクハラに、俺もだんだん慣れてきて静輝を軽くあしらう事が多くなった。
そのうち飽きてどっかに行くだろうと思ってた。
不透明な関係の中で、初めて静輝と体を繋げたのが高一の三学期。いつものように遊ばれてると思ったら、静輝は珍しく真剣な表情をして先に進んでもいいか聞いてきた。
別に俺は女しかダメってわけじゃなかったし。
その時はまだ旭のことを幼馴染としか思ってなかったし。
まあ別にいいかって軽い気持ちで静輝の言葉に頷いた。
俺にとって静輝は十分すぎるほどの相手だった。
そうやって過ごしていたら、高二のある夏の日静輝の自宅に呼び出されて、静輝の部屋のベッドの上で押し倒された。あのときに言われた言葉も相変わらず最悪だった。
『最近さぁ、なんつーかマンネリ化?してきたよなぁ。お前もこういうの慣れてきちゃったみたいだし。なんか、つまんない』
俺のワイシャツの中に手を入れながら、本当につまらなさそうにそんなことを言った。
『つまらないなら、さっさと次の相手を見つければいいのに』
『なに言ってんの。お前だから楽しいんだよ』
『じゃあ、ゲームやりません?先輩が俺で、俺が先輩。いつもとは逆でやりましょうよ』
いつも仕掛けてくるのは静輝の方だし、俺からは一度も望んだことなんかないのに、つまんないとか言われてイラッときた俺は、ほんの仕返しのつもりでそう提案した。ずっと俺より優位に立っている静輝がそんなことするわけないと勝手に思っていた。だけど静輝は少し考えたあと『楽しそうじゃん』と笑った。
次の瞬間には体勢が逆転して、ベッドに背をつけた静輝が俺を見上げていた。
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