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69.✩当てつけ
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✩✩✩✩
「よっ、相変わらずお似合いのカップルだな」
「……はあ?機嫌良いのか何だか知らないけど、いつもと雰囲気違うわよ?気持ち悪い」
普通に会話を始める柚里と市倉に驚いた。あれ……今の柚里、市倉がいるのにそこまで警戒してないっていうか……毒は吐いてるけど特に逃げるでも無視するでもなく、ただ市倉の機嫌が良い理由が分からなくて不思議そうな顔してる。市倉も、この間俺に見せたようなどす黒いオーラがまったく出ていない。一体どうしたんだ。
「いやぁ、すっげぇいい事があると柚里の毒舌も気になんねぇわ」
「え、本当に気持ち悪いわね……早く消えてくれないかしら……」
柚里は道端に捨てられたゴミでも見るような目で市倉を見ている。双子の弟だからとかじゃなくて他人に向ける視線じゃないよね、それ……。
「今日の夜、ずっと前から誘ってた人と飲みに行く事になって超楽しみでやばい」
だらけた笑顔でどれだけ楽しみだったのか勝手に語り出す市倉を横目に、俺と柚里は顔を見合わせた。
これはもう嫌な予感しかしない。
「誘ってた人ってどんな人なの?」
「めちゃくちゃ美形なんだぜ!とにかく俺のタイプでさ〜!今夜が美味しく頂くチャンスなんだよね~」
柚里が聞いたはずなのに、市倉は口角を上げ何故か俺の方をじーっと見ながら言った。
ダウトだ……。
誘ってた人って絶対に楓さんのことだ。
市倉が最近の俺と楓さんのことを知っているかは分からないけど、俺に向けてわざと言ってるのは明らかだった。さっきまで隠してた黒いオーラがすでに隠しきれてないし……。機嫌良かったんじゃなかったのかよ。
「じゃ、言いたいことも言ったし帰るわ~」
市倉は満足げにあっさり帰っていった。楓さんが家出をしていることに追い討ちをかけるような展開に、すごく精神を抉られた気分だった。
「……なんだったのよあいつ。完全に私たちへの当てつけじゃない。腹立つわ!」
「柚里落ち着いて……。相手が楓さんだとは言ってなかったよ……。うん、言ってなかった」
「そうだけど……念のため言っておくけど、あいつのタイプなんてそうそういないわよ?前に『平坂先輩以外は好みじゃない』とか言ってたくらいなんだから。どんな楓でも好み、って事なのよ?」
わぁ、楓さん限定……なんて市倉の一途さに苛立ちを越えて関心していると、柚里がぼそりと呟いた。
「今夜、楓は食われるかもしれないわね」
「…………え?」
不穏な言葉が聞こえた気がして柚里の顔を見ると、柚里ははっとして「やっぱり今の無し!」と撤回していた。
く、食われるって、やっぱりそういう……。市倉も美味しく頂くとか何とか言っていたし……。いやいやいや、楓さんもそこまで無防備じゃないはず!市倉が会うのが楓さんだって決まったわけじゃないし!……でも……市倉と楓さん、連絡先を交換してるから絶対にあり得ないってわけじゃ…………。
またぐるぐる悪い方に考え始めてしまう。そんな俺を見て柚里が頭を抱えていたなんて全然気付かなかった。
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