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75.△一目惚れ
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△△△△
オレと平坂先輩が初めてちゃんと会話をしたのは、中学一年生の時。和泉を通して知った程度で、オレと平坂先輩にはそれ以外の接点が無かった。
兄弟みたいに仲の良い幼馴染がいると話には聞いていたけど、それまで顔を会わせたこともなければ特に興味があったわけでもなく、たまたま和泉の家に遊びに行ったときにちょうど平坂先輩がいて紹介されたのがきっかけだった。
一目惚れをした。
もともと恋愛対象が同性だったオレは友人に紹介された綺麗な男にすぐに恋に落ちた。二つしか違わないはずなのに、その時の平坂先輩がすごく大人に見えたのを今でも覚えてる。
一年生と三年生。
在学期間が少ししか被らないし、部活とか委員会とか学校での交流もない。校内で見かけても話すほど親しくはなかったから、それ以降も平坂先輩の事は和泉から時々話を聞くくらいだった。
日に日に大きくなる好きな気持ちを持て余していた俺は、毎日のように聞かされる話の中で和泉が先輩の事をそういう目で見ているのに気づいた。
本人の口から直接『楓が好き』と聞いたわけじゃないけど、普段からどこか冷めていてあまり感情を表に出さない和泉が平坂先輩の事になるところころと表情を変えていたから、いつも一緒にいたオレはわりと早い段階でそのことに気づいた。自分も同じ人に恋をしたから気づけたのかもしれない。
オレも和泉のことは友達として大事だったし和泉の悩みも聞いて知っていたから、自分の気持ちに鍵をして応援するつもりだった。
だけど和泉から先輩の話を聞く度に"和泉が羨ましい"という気持ちが強くなって、いつの間にか応援したいという気持ち以上に和泉に嫉妬するようになっていた。
大切な友人に嫉妬する自分が嫌で、オレの気持ちに気づかずに先輩のことを話す和泉にもイライラして、でも和泉が大事な友人であることに変わりはなくて。
相反する自分の気持ちに板挟みになって何もできずにいるうちに、先輩は卒業して俺たちは二年になった。
平坂先輩を校内で見かけることがなくなればオレの恋も風化していくだろうと思っていたけど、時たま和泉から聞く先輩の話に余計に恋焦がれるようになって、後を追いかけるように同じ高校に進学した。
当然のごとく和泉も同じ高校で、中学に引き続きオレは恋心を隠して和泉と友達を続けていた。
高校生になっても相変わらずの和泉から、ある日『楓と付き合う事になった』と報告を受けた。
本当に嬉しそうに笑う和泉を見て、仕方が無いことだと諦めようとしたけど、毎日仲良く登校する二人を見るうちにだんだん苦しくなっていった。和泉に嫉妬する事はあっても、大切な友人の恋人を横取りしようなんて考えはなかったから、持て余してどうすることもできない恋心が悪い方向に進まないように自制する方法も覚えた。
――そんな風に恋を引きずって約八年。
この間ふらっと立ち寄ったバーで出会った男が、まさか平坂先輩の知り合いだとは夢にも思わなかった。
バーでの会話でシズさんは『俺たちの好きな奴って似てるな』と笑っていたから。
そして今朝。
何故か先輩がシズさんの家にいて、しかもソファーで押し倒されていた。
目の前の光景にシズさんの言っていた人って平坂先輩のことだったんだ、とすぐに理解した。先輩には和泉がいるのにどうして、という気持ちも、シズさんに押し倒されているのを見てしまってショックを受けたのも一瞬で、単純なオレはずっと好きだった人に会えて最高の朝だと思ってしまった。
シズさんが何かをひそひそ話すと頬を真っ赤に染める平坂先輩。友達だって言ってたけどシズさんと平坂先輩の様子からしてただの友達じゃないことは明らかだった。やけに近い距離感にもしかして……、って思った。
だけど頬を赤くした平坂先輩に熱い視線を向けられたオレが黙っているわけもなく、いつものように平坂先輩を飲みに誘ってからシズさんの家を出た。
昼頃に平坂先輩から『今日、行ってもいいよ』とメッセージが入っていて気分は一気に舞い上がる。どうせまた拒否されるだろうな、と心のどこかで思ってたから反動がすごい。
午後の講義中も、先輩とどこに行こうか悩みまくった。結局、初デートは雰囲気のいい所がいいというモットーを貫いていつも気に入った人を口説くときに使うバーを選んだわけだけど。
気づけばあっという間に一日が終わって、ぼーっとしていたと友達に心配された。おまけに帰り際なんて、柚里がいるのにも関わらず自分から和泉の所に行ってしまった。和泉は気づかなかっただろうけどあんなに驚いた柚里はなかなかレアだ。
とにかく頭ん中が先輩の事でいっぱいで、運悪く入っていたバイト中も先輩と何を話そうかとかしか考えていなかった。
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