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77.△熱
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△△△△
先輩の体調が悪そうな事に気づいたのはバーに入ってからだった。店に着くまでは緊張してなかなか顔が見られなくて、だけどカウンターで隣に座ったときにふと見たら血の気が引いていていかにも体調が悪いですって感じだった。そこですぐに帰ればよかったのに、先輩と飲みに来れた嬉しさで自分の欲を優先してしまった。
お酒を飲み始めてからだんだん肌に色が戻ってきたから、寒い中外で待っていたせいかとあまり気にせずにいたけど、時間が経つにつれてまた顔色が悪くなってきて心配になった。
店から出てずっと体調が悪かったんじゃないのかと少しつついてみると、平坂先輩は気まずそうな表情をしていてやっぱりそうだったんだと確信する。
無理をしてまで付き合ってくれなくてもよかったのに。フラフラしているのもぼーっとしているのも酒のせいだけではなさそうだった。
オレが送っていくことに渋々承知してくれた先輩は歩き出そうとした途端倒れそうになって、慌てて腕と肩を掴んだものの先輩の体からは力が抜けてぐったりとしていた。
頬に触れるとすごい熱くて、何度も呼びかけても目を覚ましそうになかった。
やば、どれだけ無理してたんだよこの人……。
家まで送ると言ったはいいけど、オレは先輩がどこに住んでいるのかちゃんと知らない。和泉からも柚里からも何も聞いてこなかったから。だからとりあえずシズさん家に連れて行くことにして捕まえたタクシーに乗り込む。車内でシズさんに連絡を入れている間も、先輩はぐったりとオレに凭れかかったままだった。
最終的にはヤるつもりで誘ったとはいえこんな状態の先輩を襲うほど腐ってない。
それでもほら、ホテルや自宅だと二人きりだし今の平坂先輩の状態にかこつけて何かしたらアレだから……いや、何もしないけど万が一何かあるといけないし……。念のため、シズさんがいた方がいいだろう。
「風邪だな。薬飲んで寝てれば大丈夫だろ」
「先輩も、体調悪いならすぐ言ってくれればよかったのに……」
「楓は昔から自分の事は他人に関係ない、って感じだったからなー。何考えてるか分かんねぇ時あるし」
シズさんは自分のベッドで眠っている平坂先輩を愛おしそうに撫でた。そういやこの人、『忘れられない人がいる』とか言ってたけどそれって平坂先輩のことなんだよな……。
和泉はともかく、シズさんもライバルなのか……。
平坂先輩にとって、シズさんは先輩で和泉は幼馴染。二人とも平坂先輩の事をよく知ってる。それこそオレの入り込む隙なんて無いくらいに。
先輩の頭を優しく撫でるシズさんをなぜだか見ていられなくて、オレはそっと寝室をした。
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