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79.✧安静
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✧✧✧✧
目を覚ますと見慣れない天井があった。起き上がろうとしたけど体に力が入らなかったから、首だけ動かして周りを見る。ああ、なんだ……静輝の家か。
自宅じゃなかったことを少し残念に思いつつどうして俺がここにいるのか考えてみたけど、ぼーっとする頭では答えにたどり着けなかった。たしか市倉と飲みに行って、それから……どうしたんだっけ。
「お、起きたか」
「しず……」
「風邪なのに無理しやがって。熱は……まだあるな。飯食えそう?」
食欲がないからいらない、と首を振ると頭に響いた。俺の腰の辺りに座っている静輝はそっか、とだけ言って俺の頬を撫でた。
静輝の大きな手に撫でられると子どもみたいに安心する。俺が撫でるのだったら旭がいいけど、撫でられるのだったら静輝が心地いい。
「今日一日は大人しくしとけよ。何かあったら俺が遼介にすぐ言うこと。分かった?」
「いちくら……」
「あれ、覚えてねーの?遼介が倒れたお前を俺ん家まで連れてきたんだよ」
「そうだったんだ……」
だからあとでお礼言っときな、と静輝は微笑んだ。
しばらく静輝に撫でられているとカチャッと寝室のドアが開いて、中の様子を窺うように市倉が顔を覗かせる。
「シズさん、飯……。あ、平坂先輩おはようございます」
「おはよ……市倉」
俺が起きていると知った市倉はベッドまで駆け寄ってきた。それと入れ違いに静輝が寝室から出て行く。
「体調どうですか?」
「昨日よりは、マシかな……。えと、ここまで運んでくれたんだってな、ありがとう……」
「いえいえ!……でも、具合悪かったなら言ってほしかったですよ。めちゃくちゃ心配したんですから」
市倉は眉を下げて困っているようなほっとしたような表情をした。なんだかんだ言って優しいやつだ。体がだんだん動くようになってきて起き上がろうとすると、市倉に肩を押されてまたベッドに沈められた。
「ちゃんと安静にしててくださいよ。風邪くらいすぐに治りますから、少しの辛抱です」
「ただの風邪だろ。もう大丈夫だから」
「それでも、オレが心配なんで。安静にしてなかったらキスしますからね。されたくなかったら治るまでベッドにいてください」
市倉は口角を上げてニヤリと笑った。なんでそうなるんだよ……。
でもまあ、市倉の気遣いは十分伝わってきたから、今日くらいは大人しくしていよう。
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