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81.✧帰宅
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✧✧✧✧
静輝と市倉に看病してもらい、四日で体調は良くなった。いつもは風邪くらいすぐに治るのに、心身共に疲れていたからか俺にしては思ったより長引いてしまったな。
若干ホームシックというか旭が恋しい。早く家に帰って旭と話をしなくてはならない。
「楓ー、お前ホントに大丈夫か?まだ微熱あるじゃん」
「家に帰ってからも少し休むんで平気ですよ。いろいろとお世話になりました」
「お前の平気は信用できないんだけどな。……また何かあったらいつでも来いよ」
「はは、そうさせてもらいますね」
珍しく外まで見送りに出てきてくれた静輝に別れを告げて車に乗り込もうとすると、買い物に行っていた市倉が帰って来た。
「え、平坂先輩もう帰るんですか!?まだ熱あるんじゃ……」
「もう大丈夫だから。世話になったね、ありがとう市倉」
「いえそんな!あ、そうだ!先輩、今度は体調が万全の時に飲み行きましょうね!」
人懐こい笑顔でそう言われて素直に了承する。この四日間で市倉に対しての苦手意識は無くなっていた。人の印象なんて接すれば変わるものだ。また連絡してくれ、と市倉に言って車に乗り込む。
さあ、旭の待つ家に帰ろう。
四日ぶりに戻ってきたマンションは、エントランスに大きなクリスマスツリーが置いてあること以外は特に変わっていなかった。
エレベーターに乗り部屋がある階まで上がる途中そういえば、とある事に気がついた。
今日は平日だから旭は学校に行ってるはずだ。
俺の言いつけを守っていれば家にはいない。今すぐにでも会いたかったから、少し……いや、けっこう落ち込んだ。
一週間も離れてなかったのに旭が足りない。旭から離れようと決心したあの夜、もっと旭を充電しておけばよかったな……。
カタンと小気味よい音がして鍵が開いた。
鍵がかかっていたということはやっぱり旭は家にいないのだろう。
薄暗い玄関に入って靴を脱いでいると、俯いた視界の端で何か黒い物が動いた。
驚いて玄関の照明をつける。
「っふ……ヒック…………、あ……?え、えっ?かえでさん!?」
「旭……何してるのこんなとこで」
上がり框に自分の膝を抱え込むようにして座り込んでいる旭の目は、泣きはらしたのか真っ赤になっていた。旭は幽霊でも見ているような顔で俺を見つめてくる。
たっぷり十数秒ほど見つめてきた旭の顔が、だんだん歪められていく。
「かえでさんだ………うう……楓さん!!」
旭はわーっと声をあげて泣き出し俺に抱きついてきた。ここじゃ泣き声がドアの外まで聞こえてしまうから、旭を引っ付けたままとりあえずリビングに移動した。
……なんだかお互い心の準備ができないまま話すことになりそうだ。
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