アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
92.✧自分の事
-
✧✧✧✧
昨日、今の旭と初めてセックスをした。
前の旭とも何度もそういう行為はしてた。
体自体は前の旭と変わらないせいなのか、旭の感じ方は前の旭とほぼ同じでめちゃくちゃ気持ちよかった。
旭の喘ぎ声が響いていた寝室は、すでにカーテンの隙間から朝日が入り込んで微かに明るい。
旭の頭を撫でていると、もぞもぞと旭が身じろいだ。
「……かえでさん……前の俺の事、考えてる?」
「………………ごめん………」
目を覚ました旭は少し掠れた声でそう言った。声が掠れているのは寝起きだからって理由だけじゃないだろう。
結構可愛い声で啼いてたもんな。
昨日の旭の乱れ方を思い出して頬が緩む。そんな俺を旭は不思議そうな目で見ていた。
今の旭を見ると、どうしても前の旭とダブらせてしまうことがある。お互いに好きと伝えたんだから、もう記憶にこだわっているわけではないけど。
なんというか……恋人の形見を相手にしてる感じだ。自分で言っておいて何だけど、形見って言葉、今の旭にすごいしっくりくるよな………。
「ううん、考えていいよ。そのかわり、前の俺が、どんな人だったか教えて?その……自分の事知りたいから……………」
『自分の事』ねぇ………。
どうやら旭も俺と同じ結論に至ったらしい。巡り巡って結局のとこ、一番最初の考え――記憶はないけど旭は旭、という考えに戻ってきたわけだ。
「前の旭と今の旭の違いは、記憶があるかないかと俺に対しての態度くらいだよ」
「………ほんとに?」
「ほんとほんと。言動とかふとした仕草は同じなんだよ。昨日もそう。噛んできたでしょ?前の旭にも噛みグセがあったんだよ」
今の旭との生活は前のそれとそんなに変わっていない。
変わった所と言えば、旭がベッドの中だけじゃなくて日常生活でも素直になったことくらいだ。
記憶があってもなくても旭がいる生活に変わりはないし、俺も旭がいるだけで満足できているから、肝心なのは記憶じゃないんだと思う。
一般的に見れば記憶ってすごく大切なものなんだろうけど、俺と旭にとってはそこまでじゃなかったみたいだ。
本当に、他に何も無くても俺は旭がいるだけで幸せなんだから。
「前の俺って、楓さんにどんな態度とってたの?」
「んー?ツンツンしてばっかで変なとこで素直じゃなかったよ。日常生活では今の旭の方が可愛げがあるね。セックスの時は今の旭と同じ。すごく素直になってこれでもかってくらい、俺の事を求めてくる」
「あ、う……そうなんだ………」
知らない自分の事とはいえ、情事の際の自分がどんな風だったかを聞かされて旭は頬を赤くした。
そういや、こういう初々しい反応も前の旭にはあまり見られなかったな。
俺は心の中でそんなことを考えながら、純粋で一段と可愛くなった恋人を抱きしめた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
92 / 322