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97.✧約束と仕事
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✧✧✧✧
『昨日の夜、楓さん、職業教えてくれるって言ってたよね?』
旭が言ったのは俺が思ってたのと違う言葉だった。
もちろん約束したから今日のうちには俺の仕事について教えようと思ってたけど、さっきの旭は本当にそれが気になっていたのか?
そんなことを考えながら、実際に見せるのが一番手っ取り早いと思って旭を仕事部屋に連れてきた。
機材やらあまり見かけないもので溢れかえってる部屋が珍しいらしく、旭はきょろきょろしている。
「か、楓さんの仕事って………」
「うん、俺、音楽関係の仕事してるんだよね。主に作る方なんだけど。高二までピアノとかいろいろ習っててさ、まあ、環境が整ってたのもあるし……、今の会社の社長に目をかけてもらってね」
高校の時に静輝に言われて作った曲を、静輝が自分の叔母である木久社長に聴かせたのがきっかけだった。
静輝が何をどう言ったのか分からないけど、初めて社長と会った時には、俺はすでに社長のお気に入りとなっていた。当時、俺は高校生で木久社長は先代から会社を引き継いだばかりだったのに、社長はあの手この手で俺を自分の下に置こうとした。
大学は行きたかったから、しばらくは断っていたけど、結局、大学を卒業したらとかある程度は自分のやりたいようにやるとか、他にも会社側にとっては無理難題の条件付きで社長の下で働くことになった。
まあ、在学中も社長の下で活動していたんだけど、大学卒業と同時に正式に契約…的なものをした。
よくよく考えたらそれらを快諾する木久社長はどうかと思う。元締めが変人なら一族で経営しているあの会社も、変人の集まりにでもなるのだろうか。反対の声はなかったらしい。
ちなみに静輝も木久社長の下で働いている。
役職は違うけど俺が会社に顔を出した時、ごくたまに社内ですれ違うことがある。
「でも、そう簡単になれるものじゃないでしょ?すごい」
旭はそう言いながらデスクの上に乱雑に積まれたCDケースを手に取った。最近人気が出ている例のユニットのアルバム。
静輝が個人的にスカウトしてきただけあってあのスペックだ。
「もしかして、楓さんの作ったのとか入ってる?」
「少しだけね」
「ああ、だからこの間の曲………」
少しだけ、とは言ったものの入ってるのは八割俺が作った曲だ。残りの二割も何かしらで関わっている。
この間の曲とはチャンネルを回した先でちょうどやっていた音楽番組でこのユニットが歌っていたやつだろう。
「楓さんってなんでも出来るんだ………」
アルバムを見つめながら旭はそう呟いて、自分の事のように嬉しそうに微笑んでいた。
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