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俺の仕事について教えた後も、旭は興味津々といったように、わあ、と声を漏らして大小さまざまな機材に見入っていた。
可愛いなあ、なんて壁に寄りかかってそんな旭を眺めていると旭は一つの棚に近づいて行った。
「か、えでさん、これ………」
「あー、それ?一緒に写ってるの俺の先輩」
「……へえ、先輩………」
どうやら棚に置かれた写真が気になったらしい。飾られている写真には、俺と一緒に静輝が写っているものや旭一人を写したものがある。
こちらに背を向けているせいで旭の表情は分からないけど、旭は何か考え込んでいるようだった。
「なに、どうした?」
「あ、いや………」
棚の前に突っ立って動かない旭の隣りに行ってそう聞くと、旭はちらりと俺を見たあとすぐに写真に視線を戻した。
いたって普通の写真だけど気になるらしい。
写真を見つめる旭は無表情でいるのにその瞳にはいろいろな感情が入り混じっているのが分かった。
旭の考えてることは結構分かりやすい方で、ころころと変わる表情を見れば一目瞭然だ。
たとえ旭が俺に迷惑をかけたくないと思って表情を取り繕っていても、雄弁に物語る旭の目を見れば考えている事なんてすぐ分かる。
だけど旭は変なとこで頑固だから一度言わないって決めたらなかなか言ってくれない。それに加えて少しマイナス思考になりがちだから、不安や悩みがあるのならうまく吐き出させてあげないとだ。
旭がどんな風に思っていても、俺は旭の口から不安や悩みを聞きたいわけで。旭の事に関しては考えてる事も含めて全部知りたい。
隅から隅まで全部知って旭を管理したいわけじゃなくて、旭の目に映る世界に対して旭自身がどう思うのかを単純に知りたいだけだ。
全部知りたいし、全部欲しい。
前の旭は『全部楓にあげる』なんて可愛い事を言ってくれたけど、記憶を無くした今、その言葉はあって無かったようなものだ。
もう一度、旭の全部が欲しい。きっと本人にこんな事を言ったら驚かれるだろうけど。
聞き出すとしたら、やっぱりベッドの中だろうか。
思考が溶けた旭はおそろしく素直だし、逃げられない状態に陥るとなおさら素直になる。
………旭が自己完結しないうちに聞き出すとするか。
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