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100.✩何もない
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✩✩✩✩
あのあと、出来るだけ普段通りにしようと頑張って一日を過ごしていたけど、ずっと心の中にモヤモヤを抱えたまま夜になった。
楓さんは仕事を片付けてから寝ると言ったから、先に一人でベッドにいる。
……早く、楓さん来てくれないかな………。
何かが体を這うような感覚がして意識が浮上した。
うっすらと目を開くといつも通り寝室の壁が見える。後ろに感じる体温は楓さんが仕事を終えてベッドに入ってきたことを示していた。
なんだ、楓さんが触ってるだけか。
腰周りを撫でていたものが楓さんの手だと分かってまた眠りにつこうとしたら、撫でる手の動きが変わった。
「んっ………楓さん……?」
「あ、起きた?」
「何してんの……あっ………ちょっと、どこ触って………」
「旭が気持ちよくなるところ、だけど?」
気持ちよくなるって………。
くすぐったいだけなんだけど、どこにそんな根拠があるんだろう。
俺が気持ちよくなることが前提でこんな触られ方をされたら、眠れないし堪ったものじゃない。
半ば呆れて溜め息をつくと耳元でクスクスと笑い声がした。
しつこく腰を撫でてくる手にうんざりして抗議しようと寝返りをうったら、手が上がってきて背中を引き寄せられた。楓さんの方を向いてる俺はすっぽりと楓さんの胸に収まる。
「旭さ、浮かない顔してるけど何かあった?」
「え?」
「昼間のキスマークのときも、仕事部屋で写真見てたときも、ずっと別のこと考えてたでしょ」
いつもと変わらない穏やかな声色。間接照明もついていなくて寝室は真っ暗だしお互いの表情は分からないはずだ。
それなのになぜか、楓さんが心配そうな顔をしているのが分かった。
やっぱり、俺が何を隠そうとしても楓さんは気付いちゃうんだ………。
でも、先輩のことを聞くつもりはない。だって、本に挟まっていた写真のことも言っちゃいそうだし。
どうせ言うのだったら、もっと整理して落ち着いてからがいい。
「何も、ないよ?」
「あのね、旭の表情はすごく分かりやすいから、隠そうとしても無駄。………で、何があったの?」
「何もないって…………」
「そう、何もない、の一点張りだね。素直になったと思ってたけど、そんなに変わってなかったみたい」
怒りを孕んだ声に驚いて楓さんを見上げたけど、当然真っ暗で表情は窺えない。
どうしよう、あまりにも言わないから呆れられた………?
何も言えずに押し黙っているとはぁ、と大きな溜息が聞こえた。
カチっと音がして間接照明がつくと、すぐ目の前にいる楓さんと目が合った。
「少し、話し合いをしようか」
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