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197.✩黙ってない
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197
✩✩✩✩
家に帰ると真っ先に桜さんが出迎えてくれた。
一日ちょっとしか離れていなかったけどこのテンションが懐かしい。
玄関から桜さんにがっしり腕を掴まれてリビングに連れてこられた。そして、楓さんが夕飯を作っている間、向こうで見た紅葉が綺麗だったとか、旅館の料理がすっごく美味しかったとか、たくさん土産話を話してくれた。
「アサくん、また郁くんのお店でバイト始めるんだって?」
「いくくん?」
「高瀬郁くん!楓と仲良かったのよ〜。あ!卒アルに写真あるんじゃない?」
桜さんはそう言うやいなやキッチンにいる楓さんのところへ行った。「楓~、卒アル貸して〜!」なんて楽しそうな声が聞こえる。
知り合いだとは聞いていたけど、卒アルに写真が載ってるってことは同級生だったんだ。
しばらくして卒アル片手に桜さんが戻ってきた。
前にも一度楓さんの話を聞きながら見たことあるけど、桜さんはまた違った話をしてくれそうだ。
「あ、ほら!この子が郁くんよ!アサくんは会ったことあるのよね?」
「はい。この間、大和に連れてってもらったんです」
「大和くんって買い物行ったときに会った子よね。その子も郁くんとこでバイトしてるの?」
「ええ、前の俺とも一緒だったらしいですよ」
「仲いいのね〜!ふふ、ちゃんとお友達と仲良くやれてるみたいで良かったわ!」
桜さんは柔らかい笑みを浮かべて俺の頭を撫でた。……楓さんのお姉さんだけじゃなくて、俺のお姉さんみたいだ。楓さんに感じるのと似たような安心感がある。
「二人とも、ご飯でき……ちょっと、桜姉?」
「ふふふっ、アサくん可愛いわ〜!あら、楓」
「わ、桜さん!?ひ、やめっ……」
ダイニングへと続くドアを少し開けて楓さんが呼びに来たけど、桜さんは気にする素振りも見せずに俺に抱きついてきた。ツーっと脇腹をなぞられて顔がひきつる。楓さんの顔からは表情が消えていた。
そんなことをされてる俺を見て、やっぱり楓さんは黙ってなかった。
「学習しないやつめ」と真顔で呟いてこちらへ近づいて来ると、桜さんの首根っこを掴んで俺から引き離した。ずるずると引きずって廊下に続くドアから先に桜さんを出すと、こちらを振り返った。
「旭はダイニングに行っててね。すぐ戻るから」
「は、はいっ!」
びしっと姿勢を正して言われた通りダイニングで待ってると、間もなくしていい笑顔を浮かべた楓さんとこってりしぼられた桜さんが戻ってきた。
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