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6.キスシーンを見た瞬間-3
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そこに立っていたのは、さっきまでミカリと話していた男。
夏がいた。
「ボーッとして大丈夫っすか? 体調でも悪い?」
「え……? いや…別に……」
夏は三善を見付けて慌てて来たのだろう。スーツはちゃんと着ているのに、ネクタイだけは結べていなかった。
「……君はネクタイもちゃんと結べないのか?」
三善は、ネクタイもちゃんと結べない夏に呆れながら、夏を中腰にさせ、いそいそと手を動かした。
こうなったのも自分のせいであるから、仕方ない。
「ははっ、俺、手先不器用なんですよ。だから、三善さんがいないと困っちゃいます」
「……悪い」
普通なら、スタイリストは役者が着替える所にいて、その手伝いをしなければならない。
それが、三善の仕事である。
けれど、今日は何故か夏と顔を合わせるのが嫌で、持って来た衣装をロケの為に借りたた一室に置き、現場に来てしまった。
ここでも、三善の仕事はある。
それを自身の言い訳にして、夏よりも先にここに来た。
でもそれは、良い事ではない。
例え、役者と何があったとしても、自身の与えられた仕事は熟さなければならない。
今までセクハラされようが、罵倒されようが、顔色変えずに熟してきたはずなのに、今回ばかりはそれができず、逃げてしまった。
その結果、こうなってしまった。
だから、素直に謝るしかない。
「これからは、ちゃんとするか…ら……」
ネクタイを結ぶ手が止まる。
なぜなら、その手を夏がギュッと握ってきたからだ。
「ちょ、ちょっと。そんな事されたら結べないよ……」
三善は、ははっと力なく笑うと、グイッとその手を掴まれたまま夏が何処かへと進み始める。
「な、何っ? ど、どこ行くの?」
三善は夏の行動に驚き、声が裏返る。
でも、その手を振り払う事もできず、周りを気にしながら夏の向かう先に従った。
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