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11.愛と涙とその姿-1
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ずっと下を向きながら祈り続けた。
そして、数十分後、タクシーが止まった。
「お客さん、着きましたよ」
タクシーの男が三善にそう声を掛ける。
その声で、ハッと顔を上げた三善は、財布から1万円を取り出して、男の手の中に入れた。
「今お釣り……」
「入りません。ありがとうございましたッ」
お釣りなんて手にしている時間はない。
そんな待つ時間は三善にはない。
三善は、勢いよくタクシーから出ると直ぐに走り出す。
足元は不安のせいでおぼつかず、ガクガクしているが、兎に角、必死に走った。
(遠い……遠いよ………っ)
裏から入れる場所がある。
そう壱成は言っていた。
三善は、正門に沢山の記者や報道陣がいるのを確認し、気付かれないように、帽子を深く被りながら裏まで走った。
病院は大きかった。
都内で一番でかい病院は、裏までの距離が長い。
でも、普通は正門から入るので仕方ないと言えば仕方ない。
確かに、壱成が言っていた通り、裏手には人がいなかった。
ここは関係者以外は入れないので、正門とは違い暗かった。
「ついた……っ」
本当に着いた。
ようやく、病院の中に入れる。
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