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「若、着きましたよ」
柚木の声で思考の底から浮上してきた意識を窓の外に向けると、もう本家についていた。
「ああ」
車から降りて麗が待つ部屋に向かう。
泣いてなきゃいいけどな...
部屋に近づくと部屋の前で狼が麗を抱いて立っているのが見えた。
「麗」
獅琉が呼ぶとすぐに麗が振り返った。
「しぃ...っ!」
泣くのを我慢していたのか、涙をいっぱいに溜めていた麗の両目から涙がぽろぽろと落ちている。
「ただいま、麗」
「しぃっ...しーっ」
麗が狼の腕から下りてこっちに駆けてくる。
「麗っ、転ぶなよ!」
少ししゃがんで勢いよく飛び込んできた愛しい子うさぎを抱き締め、囁いた。
「お前走り慣れてないんだから走るな、馬鹿」
当の本人は全く聞こえていないようで、鼻をすんすんと獅琉のスーツに擦りつけている。
「おい鼻水つけんなよ?」
冗談でそう言いながら麗を抱いて立ち上がると狼が目の前まで来ていた。
「片付いたのか」
「ああ。喜川のことはこっちに任せろ。麗、いい子だったか?」
「分かった。麗はずっと泣かないで待ってて、いい子だったぞ。な、麗?」
狼に頭を撫でられて麗が嬉しそうに頷く。
「でも、飯も食ってないし昼寝もしてないから早く帰ってゆっくりさせてやれ」
「ん、分かった」
「ろう...ばいばい?」
「ああ、またな」
「ん...またくる...っ」
獅琉は、狼に手を振る麗を抱いたまま玄関へ向かった。
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