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それぞれの思わく 3
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それから遠山はことあるごとに長山を連れ回した。
わざわざ本校舎から離れた隔離校舎まで来て。
それから生徒会とも面識を持ち、他の生徒には睨まれ長山の生活が一変した。
卒業まで穏やかに過ごすつもりだったんだけど。
カツカツカツカツ......
誰もいない廊下に響くのは長山の歩く音だけ。
カツカツカツカツ......
そこへ長山のものではない足音が聞こえてきた。
続いて見えたのは黒色の髪をワックスで立たせた長身の男。
この学校の風紀委員長――鳴海公平。
名は体を表す、如月高校の歩く法律。
長山を認識した鳴海は歩みを止めた。
「お前は・・・・」
「こんにちは」
「長山太一、だったか」
「はい」
長山の名はこの学校ですっかり有名になってしまった。
生徒会の皆様に取り入る平凡、として。
だから風紀委員長も一般生徒の自分を知っているのだ。
長山はそう思った。
鳴海は何か考える素振りを見せた後、歩みを再開させた。
そして通りすがりざま微かに呟かれた言葉に長山は一瞬眼鏡の奥の瞳を見開いた。
――いつまでその皮を被っているつもりだ――
卒業まで穏やかに・・・・・
その願いは叶いそうにないが
暇潰しにはなりそうだ。
長山は口許に緩やかに弧を描くと隔離校舎へと最初と同じようにゆっくりと歩きだした。
教室の外からでも中の不穏な空気を感じることができる。
しかし長山は躊躇することなく手を掛けそのまま静かにドアを開いた。
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